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翻訳コラム

COLUMN

第136回引き続きSTAP細胞問題

2014.04.03
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子

また昨日からSTAP細胞の論文問題について、小保方氏の捏造や改ざんであると理研が認定した、とのニュースが流れています。しかしSTAP細胞が本当に存在するかどうかは今後1年もかかる調査研究に待つということです。
論文や画像の流用、加工も問題になっていますが、これらは特許や著作権ではどのような問題があるでしょうか?
捏造は著作権の問題ではないのですが、改ざんは例えば他人の論文を改ざんして掲載した場合は同一性保持権の侵害になります。まず他人の論文は無断で掲載してはならない、たとえある一文、一節であってもです。引用するには引用であることの表示が必要です。ここは引用です、とのカギカッコをつけ、著者、発行者、出版社、出版年月日を記載します。
また無断で内容を変えて掲載してはいけません。ある用語を変えただけでは未だ複製権の侵害です。それと共に同一性保持権の侵害にもなります。
では大部分変えれば良いのか?大部分変えればもはや他人の著作ではない、自分の意見、見解に生まれ変わるのでは?
他人の論文を参考にして自分の見解を持ち、新たに自分のことばで論文を作成すれば著作権侵害ではありません。このときどうしても使わなければならない専門用語、一般用語は他人の論文にたとえ記載されていても、使うのはOKです。
そもそも「改ざん」の意味は?今回理研の会見では改ざんをどういう意味で使っているのでしょうか?
改ざんは悪い意味で使われる言葉です。情報やデータを不正な目的で使うために勝手に変えるという意味ですが、自分で行った実験結果のデータを改ざんするのは著作権の問題ではありません。しかし他人の論文を改ざんするのは同一性保持権の侵害です。これはたとえ改ざんでなくても、正当な目的で使う意図でも、他人の論文を一部変えるのは同一性保持権の侵害です。他人の画像の流用も複製権、そして内容を加工すれば同一保持権の侵害です。
次に特許の問題ですが、STAP細胞の作成手順の特許であれば、これが実証されていない以上、実現可能性がない特許ということになります。これは未完成発明になり発明の成立要件を満たしません。特許が成立するかは今後の再現実験に待つしかありません。
ではコピペしてはいけないことを知らなかった、という言い訳は通るでしょうか?
コピペは著作権法では著作権法21条の複製権の侵害にあたります。ここに「著作者はその著作物を複製する権利を有する。」と規定されています。コピペがいけないことを知らなかったというのは、この条文を知らなかったこと、つまり法の不知にあたります。法律を知らなかったという言い訳は通るでしょうか?
刑法38条3項で「法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない」と規定しており、但書で情状により刑を減刑することができると規定されています。
では著作権法の条文を知らなかったことで故意や過失がなかったとされるのでしょうか?
前提として、なぜ故意や過失が問題になるのかというと、著作権法では損害賠償請求の要件として故意または過失を規定していますが、過失が推定されることは規定していません。特許法では特許された発明は公報に掲載されるので、発明を製品化する者は公報を見る義務があり、偶然にも同じ発明をした者は過失があったと推定されます。つまり偶然にも同じ発明をして製品化しても特許権侵害になります。
しかし著作権法では偶然にも同じ創作をした者は全員保護されるので、他人の著作物と同じであっても過失は推定されず、侵害とはなりません。
損害賠償を請求する際に侵害した者に故意または過失があったことが要件となるので、著作権者は侵害した者に故意または過失があったことを立証する必要があります。このとき著作権法を知らなかったことで故意や過失がなかったことになるのか?という問題です。
ここでは「法律」を知らなかったの「法律」を違法性の意識と解釈するのか、という難しい問題と関わってきます。
法律を知らなかったことに過失があったときはどうなのか?
しかしいずれにしても、コピペがいけないことを知らなかったという言い訳は難しいでしょう。

今週のポイント

  • 昨日からSTAP細胞の論文問題について、小保方氏の捏造や改ざんであると理研が認定した。しかしSTAP細胞が本当に存在するかどうかは今後1年もかかる調査研究に待つとのこと。

奥田百子

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東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)

著書

  • ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
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