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翻訳コラム

COLUMN

第165回職務発明の改正と中村氏のアメリカ特許

2014.10.23
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子

まず2つほどお知らせです。10月24日(金)の朝7:25にラジオ番組(文化放送)「福井謙二のグッモニ」に生出演します。話題は、職務発明の特許法改正についてです。職務発明が会社のものになるという特許法改正が行われるからです。
またノーベル賞の中村修二氏の裁判も振り返ります。中村裁判については、このブログで2週連続で追いかけてきました。今回の特許法改正は、中村裁判による影響を否定することはできません。
ところで職務発明が会社のものになる、という動きがあり、その特許法改正が国会に提出されます。国会で可決されるのでしょうか?来年、特許法は変わるのでしょうか?もし変われば一大転換です、 もうひとつのお知らせとして、「なるほど図解商標法のしくみ」3版が10月9日に出版されました。サウンドマーク、位置の商標、ホログラム、動きの商標が新たに商標の対象として入ります。施行日は来年5/14までのいずれかの日です。
ノーベル賞、職務発明の改正など、にわかに特許法が注目されるようになりました。
私も中村氏の発明、裁判の経緯についてセミナーを12月12日(金)18:00-20:00に開催します。

中村修二氏の米国特許は、以下の3つに目的が集約されます。

目的1

“It is a first object of the present invention to provide a method of vapor-growing a semiconductor crystal film, which can grow a semiconductor crystal film having a large area on the surface of a substrate with high yield".

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本発明の第1の目的は、半導体結晶膜を蒸気成長させる方法を提供し、これにより高い収率で基板の表面上に大面積の半導体結晶膜を成長させることである。

目的2

It is a second object of the present invention to provide an apparatus for growing a semiconductor crystal film, which can be prevent a "monitor window" from being contaminated over a long time period to enable observation of the state of crystal growth.

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本発明の第2の目的は、半導体結晶膜を成長させる装置を提供し、これにより「モニタ・ウインドウ」の長時間の汚れが回避され、結晶成長の状態が観察できるようになる。

目的3

It is a third object of the present invention to provide a method of vapor-growing a semiconductor crystal layer by using a semiconductor crystal layer growth apparatus having a "monitor window" free from contamination and radiating light through the "monitor window" at a high efficiency.

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本発明の第3の目的は、汚れのない「モニタ・ウインドウ」を有する半導体結晶層成長装置を使用し、高性能の「モニタ・ウインドウ」を通して光を照射することにより、半導体結晶膜を蒸気成長させる方法を提供することである。

中村氏のアメリカ特許5334277号からわかりましたが、日本の関連特許は、2628404号のほか、2556211号もあります。
“monitor window"は2556211号では「覗き窓」とされています。結晶膜の成長を監視する窓です。この窓が汚れてしまうのが従来の問題でしたが、汚れない窓を持つ成長装置を提供する、というのがこの発明の特徴です。

今週のポイント

  • 職務発明が会社のものになるという特許法改正が行われる予定である。現在は職務発明は従業員に属し、特許法35条で会社に対して相当の対価を請求できることが規定されている。
  • 中村氏のアメリカ特許5334277号の日本の関連特許は、2628404号のほか、2556211号もある。
    “monitor window"は2556211号では「覗き窓」とされている。結晶膜の成長を監視する窓である。この窓が汚れてしまうのが従来の問題であったが、汚れない窓を持つ成長装置を提供する、というのがこの発明の特徴である。

奥田百子

東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)

著書

  • もう知らないではすまされない著作権
  • ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
  • 特許翻訳のテクニック
  • なるほど図解著作権法のしくみ
  • 国際特許出願マニュアル
  • なるほど図解商標法のしくみ
  • なるほど図解特許法のしくみ
  • こんなにおもしろい弁理士の仕事
  • だれでも弁理士になれる本
  • 改正・米国特許法のポイント