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COLUMN

第166回小保方晴子氏の国際出願が国内移行

2014.10.30
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子

小保方晴子氏が発明者の一人になっている国際出願(WO2013/163296号)があります。この出願がこのたび国内移行されたとのニュースが報じられています。例えば
毎日新聞の「STAP特許:理研、手続き進める…「存在否定できぬ」」
(http://mainichi.jp/select/news/20141025k0000m040112000c.html)
をご覧下さい。
確かにこの出願は2012年4月24日にアメリカで優先権主張して出願されており、優先日から30ヶ月以内ですから、2014年10月24日が国内移行の期限でした。
WIPOウエブサイトでこの番号を検索すると"national phase"(国内段階)の情報はまだ出ていません。タイムラグがあるのでしょう。したがってどこの国に国内移行されたかもわかりません。これは理研が国内移行したと発表したとのニュースが流れただけです。
アメリカ、日本は当然でしょう。出願人は東京女子医大と理研と、アメリカのBrigham and Women's Hospital, Inc.です(しかし報道によると、東京女子医大は国内移行には加わっていないそうです)。
ということは出願人は日本とアメリカの組織なので、日本、アメリカは当然入っているでしょう。しかしSTAP細胞の再現実験が現在も行われていることを考えると、審査に入っても特許の再現性が問題になるでしょう。
再現性がないということは未完成発明になり、日本の特許法では29条1項に規定する発明ではないと判断されます。アメリカではどうか? 再現性(reproducibility)がないとはやり発明ではないでしょう。しかしアメリカ特許法を見ても、再現性の要件については見当たりません。唯一、植物特許(plant patent)は、アメリカ特許法161条で、“asexually reproduces any distinct and new variety of plant"が要件になっています。再現性に関して懸念があるのは植物特許だからでしょう。STAP細胞は植物特許ではありませんが、これも同様に考えてはよいでしょう。機械や装置と違って、生き物であるからそのときどきで結果が異なることがあるが、再現性が必要です。
それにしてもこの出願はこれだけ世間を騒がせており、他の出願と違い予備知識がありすぎるので、審査も難しいでしょう。ペーパーの上では再現性ありと判断できる場合、特許査定するのかしないのか? 問題は再現実験が特許審査が終わるまでに終わるかどうかです。
日本に関して言えば、ファーストアクション期間(出願・審査請求から最初のアクションまでの期間)は2013年では14.1ヶ月です(特許庁・特許行政年次報告書2014年版)。すぐに審査請求するとして、拒絶理由や特許査定など最初のアクションは、1年ちょっとです。
特許査定は出たけれど、再現実験に失敗したということになると、特許はどうなるか? しかし理研としてもSTAP細胞の再現実験を行っている以上、とりあえず国内移行をせざるを得なかったでしょう。国内移行をしなければ、完全にSTAP細胞の存在を否定することになるからです。
ところでこの発明の名称は、"generating pluripotent cells de novo"であり、多機能性細胞(万能細胞)を成長させる方法です。
そういえば中村修二氏の404号特許も「半導体結晶膜の成長方法」の発明であり、青色発光ダイオードそのものではありませんでした。それにしても、小保方さんの発明といい、中村修二氏の発明といい、世界を騒がせた発明を明細書を通して読めるのは、ありがたいことです。この仕事をしていて良かったと思います。

今週のポイント

  • 小保方晴子氏が発明者の一人になっている国際出願(WO2013/163296号)がこのたび、国内移行されたとのニュースが報じられている。
  • 確かにこの出願は2012年4月24日にアメリカで優先権主張して出願されており、優先日から30ヶ月以内であるから、2014年10月24日が国内移行の期限であった。
  • WIPOウエブサイトでこの番号を検索すると"national phase"(国内段階)の情報はまだ出ていない。したがってどこの国に国内移行されたかも不明である。
  • アメリカ、日本は当然国内移行されていると予想する。出願人は東京女子医大と理研と、アメリカのBrigham and Women's Hospital, Inc.であるが、報道によると、東京女子医大は国内移行には加わっていないとのことである。

奥田百子

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東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)

著書