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翻訳コラム

COLUMN

第167回職務発明の改正

2014.11.06
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子

職務発明の規定が改正され、従業員の発明は会社のものとなりそうです。これには賛否両論がありますが、私は今までとあまり変わらないので、従業員にそれほど不利益はないと考えています。
アメリカの特許法には職務発明の明確な規定がありません。そして従業員が勤務している州のコモンローが適用されます。発明をするために雇われているような職種の従業員が会社の設備を使った発明、雇用者の指示によりなされた発明は、会社のものとなります。つまり改正後の日本のような規定です。
これまで日本では職務発明は一旦は従業員に属するが、予約承継(あらかじめ勤務規則などで会社に移転すると定めておく)により、特許を受ける権利や特許権が会社に移転していました。その代わりに従業員は相当の対価を会社に請求できます。これが特許法35条ですが、これが改正される予定です。
しかし改正後はそれほど変わってしまうのか、ということですが、あまり差異はないように思われます。順序の違いに過ぎません。これまでは最初は従業員に属する、そして会社に移転する、今度はいきなり会社に属するという違いだけです。
会社が懸念する従業員による訴訟は減るのか?減るといってもこれまでも訴訟が頻発していた訳ではありません。日本では従業員が会社を訴えることが珍しいので目立っていただけです。
中村修二氏の場合は、まず彼の発明が職務発明ではないから、発明は会社に移転していなかったと主張しましたが、職務発明がいきなり会社に属すると改正されても、職務発明ではないと争えば、従業員は最初から自分のものだと主張できます。また報酬が義務付けられるので、その報酬に不満であるという訴訟も考えられるでしょう。これも改正前と何ら変わりません。しかも改正前も予約承継を決めた勤務規則に署名してしまった以上は、会社から発明を取り返すのは容易なことではありません。特許法で会社のものと決まっているのか、勤務規則で決まっているかの違いに過ぎません。
しかも従業員は会社に勤務する以上は、予約承継するという勤務規則には普通は署名するでしょう。やはりあまり改正前後で違いがありません。
つまり従業員にあまり不利益もない代わりに、会社にも特に大きなメリットはないと思います。しかしなぜ今この時期に改正の話がわき起こったのか、これも疑問です。今年の3月からこの議論はされており、とうとう収束したのか?ノーベル賞発表の時期と一致はしていますが、これとは直接関係ないでしょう。それとも中村裁判が改めて思い起こされて、収束に至ったのか?

今週のポイント

  • 職務発明の規定が改正され、従業員の発明は会社のものとなる予定である。これには賛否両論あるが、報酬が義務付けられるので、今までとあまり変わらないと考えられる。
  • アメリカでの従業者発明は、特許法には明確な規定はないが、従業員が勤務している州のコモンローが適用される。発明をするために雇われている職種の従業員が会社の設備を使った発明、雇用者の指示によりなされた発明は、会社のものとなる。つまり改正後の日本のような規定である。
  • これまで日本では職務発明は一旦は従業員に属するが、予約承継(あらかじめ勤務規則などで会社に移転すると定めておく)により、特許を受ける権利や特許権が会社に移転していた。そのかわりに従業員は相当の対価を会社に請求できる。これが特許法35条であり、これが改正される予定である。

奥田百子

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東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)

著書