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翻訳コラム

COLUMN

第168回職務発明の報酬について

2014.11.13
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子

職務発明改正については未だに様々なメディアで議論されています。特許法改正案は早ければ臨時国会に提出されるようです。発明が会社のものになっても従業員に対する報奨は会社に義務付けられます。今日は報奨について考えてみます。
職務発明の報奨はさまざまですが、中村裁判以降引き上げられたといわれています。中村氏は2万円しかもらっていませんでした。
平成9年に行われた一般社団法人発明推進協会の調査「職務発明・補償金額の調査結果」の「表2 規定上の補償時点別補償金額(特許)/(一律定額の場合)」を見ると、実績補償時(自社実施時)に最高で30万円を支払われています(http://www.jiii.or.jp/investigation/index.html)。補償時点としては、発明時、出願時、実績補償時(自社実施時)、譲渡時、外国出願時などがここで挙げられています。
発明しただけでは出願できるに値するかわからない、出願しただけでは特許になるかはわからず、会社としても特許になるかどうかわからない発明を報奨金を払って譲り受けるのであるから、リスクを負っていることは確かです。しかし出願費用とっても通常は30万円くらいですから、お金の面でそれほどリスクがあるとは思えません。また特許を受ける権利を譲り受けても、出願しないという選択肢や、出願しても放棄する選択肢もあります。
社員としてありがたいのは実績補償でしょう。特に中村氏の場合は、裁判で根拠とされた売上額が1兆円2千億円を超えていました(注:これは東京地裁判決(H13(ワ)17772号で算定の根拠とされた売上額合計であり、平成9年4月18日の時点で相当の対価を算出するためのGaN系LEDとGaN系LDの売上合計である)。
これは通常の勤務規則では対処できないレアなケースであり、だからこそ争いが起こったといえます。
今後特許法が改正されて報奨が義務付けられても、いつの時点で報奨を算定するかが最も重要です。改正点の一つである報奨義務付けは、これまで報奨規定を持っていなかった会社にとっては負担であるし、そこの従業員には朗報です。しかし算定時期が問題であり、発明時、出願時のみということになると、今までとは変わり映えせず、企業によいことばかりになってしまいます。これまで報奨規定を持っていなかった会社にとっても、数万円の出願費用はあまり負担ではないからです。

今週のポイント

  • 特許法改正案は早ければ臨時国会に提出されるようである。発明が会社のものになっても従業員に対する報奨は会社に義務付けられるとのことである。
  • 平成9年に行われた一般社団法人発明推進協会の調査「職務発明・補償金額の調査結果」の「表2 規定上の補償時点別補償金額(特許)/(一律定額の場合)」を見ると、平成9年に実績補償時(自社実施時)に最高で30万円を支払われている(http://www.jiii.or.jp/investigation/index.html)。
  • 発明しただけでは出願できるに値するかわからない、出願しただけでは特許になるかはわからず、会社としても特許になるかどうかわからない発明を報奨金を払って譲り受けるのであるから、リスクを負っていることは確かである。
  • しかし出願費用といっても通常は30万円くらいであるから、お金の面でそれほどリスクがあるとは思えない。また特許を受ける権利を譲り受けても、出願しないという選択肢や、出願しても放棄する選択肢もある。
  • 社員としてありがたいのは実績補償であろう。特に中村氏の場合は、裁判で根拠とされた売上額が1兆円を超えていた。これは通常の勤務規則では対処できないレアなケースであり、だからこそ争いが起こったといえる。
  • 今後特許法が改正されて報奨が義務付けられても、いつの時点で報奨を算定するかが最も重要である。改正点の一つである報奨義務付けは、これまで報奨規定を持っていなかった会社にとっては負担であるが、算定時期が問題であり、発明時、出願時のみということになると、今までとは変わり映えせず、企業によいことばかりになってしまう。これまで報奨規定を持っていなかった会社にとっても、数万円の出願費用はあまり負担ではないからである。

奥田百子

東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)

著書

  • もう知らないではすまされない著作権
  • ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
  • 特許翻訳のテクニック
  • なるほど図解著作権法のしくみ
  • 国際特許出願マニュアル
  • なるほど図解商標法のしくみ
  • なるほど図解特許法のしくみ
  • こんなにおもしろい弁理士の仕事
  • だれでも弁理士になれる本
  • 改正・米国特許法のポイント