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翻訳コラム

COLUMN

第174回今年のまとめ

2014.12.25
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子

早いものであと1週間で今年も終わろうとしています。今年もこのブログをお読み頂きありがとうございました。
知財にとって今年はどんな年であったでしょうか?私の印象では不況は改善され、特許業界でもプロパテントの再来への若干の兆しが見られていると思います。日本での出願件数は下降中ですが、前回のブログでも述べたように、日本を受理官庁とする国際出願は増えています。アメリカでは相変わらず企業の合併買収が盛んです。これはほとんどが特許絡みです。
前回、世界での2013年の特許出願件数が中国、アメリカ、日本の順であると述べましたが、これも考えてみれば人口が違うのだから致し方ありません。日本は人口が少ない割には健闘しています。しかし着目すべきなのは、出願件数が何件か、日本が世界で何位かということではなく、出願件数が減少し続けていること、そして国際出願が増え続けていることです。
20年前から言われていることですが、「これからは中国」ですが、その時代が本当に実現しています。
来年は日本でも職務発明に関して特許法改正がされるでしょう。今年は日本でのノーベル賞受賞者が3人も出たことからみて、日本の技術が優秀であり、世界に認められていることは確かです。中村教授のように優秀な技術者が世界に出て行ってしまわないように、特許法改正はするべきではありません。
しかし実はアメリカも職務発明に関しては、従業員が発明するような職種であり、会社も設備等を提供している場合は、改正後の日本と同じような制度を採っています。つまり発明は会社のものとなります。
ではなぜ日本ではこれほど職務発明が会社のものになることが危惧されているのでしょうか?
これは雇用形態の違いだと思います。日本では技術者が自分一人で仕事をする土壌がありません。会社に雇われるという土壌があるからです。日本のビルゲイツのような人がもっと出てくれば、発明が会社のものになっても懸念はないでしょう。
しかも従業員らも発明が会社のものになることをあまり問題視していません。そういうものだと最初から考えているからです。特許権者にはなれなくても、報酬があればよい、ということでしょう。
日本は中堅企業の技術力が凄いです。島野製作所がAppleを訴えた話をこのブログでもしましたが、これは中堅企業の技術力の高さを物語っており、このような勇気ある企業がもっと出てくれると良いとも思います。
日本にはパテントトロールは、あまり存在しません。そこまで日本人には特許を使って何かをしようという思い入れがないからです。しかしそのような知的所有権に対する関心の薄さが逆に、様々な著作権侵害の問題を引きおこしているともいえます。
知財立国と言われて10年以上が経過しますが、知財立国が真の意味で実現されているともいえません。特許翻訳を仕事としている私としては、そして特許の仕事をされているこのブログの読者の方々としては、来年以降の知財立国の実現を願いたいところでしょう。

今週のポイント

  • 知財にとって今年はどんな年であったか?不況も改善され、特許業界でもプロパテントの再来への若干の兆しが見られている。
  • 日本での出願件数は下降中であるが、日本を受理官庁とする国際出願は増えている(特許庁の特許行政年次報告書(2014版)第1部第1章2ページ)。
  • アメリカでは相変わらず企業の合併買収が盛んである。これはほとんどが特許絡みである。
  • 来年は日本でも職務発明に関して特許法改正がされるであろう。今年は日本でのノーベル賞受賞者が3人も出たことからみて、日本の技術が優秀であり、世界に認められていることは確かである。中村教授のように優秀な技術者が世界に出て行ってしまわないように、特許法改正はするべきではないと考える。
  • 実はアメリカも職務発明に関しては、従業員が発明するような職種であり、会社も設備等を提供している場合は、改正後の日本と同じような制度を採っており、発明は会社のものとなる。
  • ではなぜ日本ではこれほど職務発明が会社のものになることが危惧されているのか?
    これは雇用形態の違いだと考える。日本では技術者が自分一人で仕事をする土壌がない。
  • 従業員らも発明が会社のものになることをあまり問題視していない。そういうものだと最初から考えているからである。特許権者にはなれなくても、まあ報酬がもらえればよいという考えであろう。
  • 日本は中堅企業の技術力が凄い。島野製作所がAppleを訴えた話は中堅企業の記述力の高さを物語っている。
  • 日本にはパテントトロールのようなものは、あまり存在しない。そこまで日本人には特許を使って何かをしようという思い入れがない。しかしそのような知的所有権に対する関心の薄さが逆に、様々な著作権侵害の問題を引きおこしているともいえる。
  • 知財立国と言われて10年以上が経過するが、知財立国が真の意味で実現されているともいえない。

奥田百子

東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)

著書

  • もう知らないではすまされない著作権
  • ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
  • 特許翻訳のテクニック
  • なるほど図解著作権法のしくみ
  • 国際特許出願マニュアル
  • なるほど図解商標法のしくみ
  • なるほど図解特許法のしくみ
  • こんなにおもしろい弁理士の仕事
  • だれでも弁理士になれる本
  • 改正・米国特許法のポイント