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翻訳コラム

COLUMN

第175回あけましておめでとうございます

2015.01.08
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子

あけましておめでとうございます。今年も「奥田百子の米国特許最新事情」をよろしくお願いします。
宮沢洋一経済産業大臣の年頭所感に、「世界最高の知財立国」ということばがありました。

「平成27年(2015年)年頭所感 〜経済産業大臣 宮沢洋一〜」(経済産業省)
(http://www.meti.go.jp/speeches/data_ed/nentou2015.html)

知財立国の樹立がいわれたのは10年以上前です。「知財立国」も懐かしい言葉に思えるときがあります。もちろん毎年、政府の知的財産推進計画が発表されています。しかし本当に知財立国は樹立されたのでしょうか? ここで「世界最高」の意味を考えてみます。世界の特許出願件数でアメリカや中国を追い抜くことでしょうか?
もちろん特許の世界は出願件数だけでは比較できません。保護の厚さを言っていると思われます。「職務発明制度の見直し」が上記所感に挙げられています。しかし職務発明を会社のものとすることが発明の保護につながるでしょうか?
特許のもともとの趣旨は発明の保護、そして発明者の保護です。
「営業秘密の保護強化」もうたわれています。営業秘密とは企業秘密、アメリカではトレードシークレットです。日本では不正競争防止法で保護されており、営業秘密を盗用すると不正競争行為となります。
昨年は東芝の秘密情報がある技術者により韓国企業「SKハイニックス」に流出した、というという大きなニュースがありました。ベネッセの顧客情報の流出もありました。ネット時代であるからこそ営業秘密の保護強化が必要です。続発する著作権侵害、データの持ち出しなど知財に対する問題は山積しています。
今後は官民一体となって営業秘密を保護するという施策であることが「知的財産推進計画2014」からもわかります。
確かに企業の情報がこのように流出すると、秘密管理は一企業だけの問題ではなくなります。秘密管理の基準も国が統一的な基準を作成し、指導していく必要があります。しかしこのようなデータの持ち出しが問題になった背景には、派遣社員の増加や仕事のアウトソーシング化、社員の関連会社への転籍、会社に対する忠誠心の欠如という事情もあります。したがって秘密管理の統一的な基準も必要ですが、雇用情勢の改善も必要です。会社に対する忠誠心がなくなると、知財の世界にもこのように波及してきます。
現状の雇用環境の中で、職務発明を会社のものとすることについては疑問を感じます。発明が会社のものとなって従業員が退職した場合はどうなるのでしょうか?
発明も技術情報であり、この点も官民一体となって職務発明に関しても基準を決めることが望まれます。

ところで年末年始にかけて「特許翻訳のテクニック」の改訂を行っていました。この本は2011年に出版されましたが、内容を新しくして、特に期待できる部分は明細書の翻訳の章です。ここにあっと驚く特許の解説が入っています。

今週のポイント

  • 宮沢洋一経済産業大臣の年頭所感に、「世界最高の知財立国」ということばがあった。
    「平成27年(2015年)年頭所感 〜経済産業大臣 宮沢洋一〜」(経済産業省)
    (http://www.meti.go.jp/speeches/data_ed/nentou2015.html)
  • 「世界最高」の意味を考えてみる。特許の世界は出願件数だけでは比較できない。保護の厚さを言っていると思われる。
  • 「職務発明制度の見直し」が上記所感に挙げられている。しかし職務発明を会社のものとすることが発明の保護につながるであろうか? 特許のもともとの趣旨は発明の保護、そして発明者の保護である。
  • 営業秘密の保護強化」もうたわれている。営業秘密とは企業秘密、アメリカではトレードシークレットである。日本では不正競争防止法で保護されており、営業秘密を盗用すると不正競争行為となる。
  • 今後は官民一体となって営業秘密を保護するという施策であることが「知的財産推進計画2014」からもわかる。
    確かに企業の情報が流出すると、秘密管理は一企業だけの問題ではなくなる。秘密管理の基準も国が統一的な基準を作成し、指導していく必要がある。
  • このようなデータの持ち出しが問題になった背景には、派遣社員の増加や仕事のアウトソーシング化、社員の関連会社への転籍、会社に対する忠誠心の欠如という事情もある。
  • 現状の雇用環境の中で、職務発明を会社のものとすることについては疑問を感じる。発明が会社のものとなって従業員が退職した場合はどうなるのか?
    発明も技術情報であり、この点も官民一体となって職務発明に関しても基準を決めることが望まれる。

奥田百子

「もう知らないではすまされない著作権」(奥田百子監修、中央経済社)3月19日発売!

東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)

著書