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翻訳コラム

COLUMN

第229回とんちゃんり

2015.03.11
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

とんちゃんり、といっても三味線の音のことではありません(それは「ちんとんしゃん」…苦笑)。

そう、北朝鮮の地名ですね。「人工衛星」と称する弾道ミサイルを打ち上げた発射台のあるところの地名です。最近はあまり話題になっていませんが、一時有名になった地名ですよね。

朝鮮半島の地名は、多くは漢字に置き換えられます。朝鮮半島も漢字文化圏ですから、多くの地名は漢字で表記ができるのです。その辺は日本と同じような状況ですね。例えば、北朝鮮の首都ピョンヤンは「平壌」と書きますよね。韓国の都市プサンは「釜山」と書きます。ちょっと例外的に、韓国の首都ソウルは漢字が無いそうですね。昔は日本では「京城」と書いていたと聞きますが、「ソウル」という言葉とは何の関係もないそうです。中国では最近まで「汉城hàn chéng」と書いていましたが、これも「ソウル」という言葉とは関係ないそうですね(現在は中国では「ソウル」という言葉と音の近い「首尔shŏu ěr」と言っています)。ですから、「ソウル」はちょっと例外ですが、それ以外の地名はたいてい漢字表記があります。

で、朝鮮半島の地名は韓国語・朝鮮語の漢字音で読むわけです。当然ですが(笑)。

で、この「トンチャンリ」という地名は「東倉里」と表記されるようで、中国のメディアではこのように書かれていますし、日本でも漢字表記される場合はこのように表記されているようですね。(東昌里と書かれている場合もあるようです。)

さて、友人と一緒にテレビニュースを見ていた時、この「トンチャンリ」という地名が出てきたのですが、漢字表記が「東倉里」となっていたのを見た友人が、素朴な疑問をつぶやきました。

「倉っていう字は、チャンって読むんだね。日本語の音読みのソウとは全然違うんだなぁ。どうしてだろう。」

たしかに、ふつうの日本人にとっては、不思議でしょうね。

そもそも漢字ですから、中国語の発音をひもといてみましょうか。

(漢字)→ピンイン 韓国語 日本語

  • 東 → dōng トントウ
  • 倉 → cāng チャンソウ
  • 里 → リリ

注:韓国語の発音は本来ハングルもしくはローマ字で表記すべきですが、僕も読者の皆さんの多くも詳しくはないと思いますので、カタカナで表記しておきます。

三文字三様ですが、よ〜く見ると色々気づかされます。

まず、中国語で「-ng」のもの(東 dōng と倉 cāng)は韓国語では「ン」で終わっているけど、日本語では伸ばす音になっています。

これは実はほとんどすべての「-ng」で終わる漢字に当てはまります。他に例えば:

  • 藤 → téng トントウ
  • 生 → shēng センセイ/ショウ

逆に中国語で「-n」で終わる漢字は、韓国語ではやはり「ン」で終わりますが、日本語では伸ばす音ではなく「ン」で終わるのです。

  • 韓 → hán ハンカン 鮮 → xiăn ソンセン

注:実は韓国語でも「-ng」と「-n」の区別があり、中国語で「-ng」のものは韓国語でも「-ng」です。中国語で「-n」のものは韓国語では「-n」のものと「-m」のものがあります。

ところで、一見ずいぶん変化しちゃったなぁと思うのが「倉」という字の音ですね。中国語と韓国語はちょっと似ていますが、日本語では子音が「サ行」になっちゃっています。理由は分かりませんが、中国語で「c」のものが日本語で「サ行」になっているものはたくさんあります。例えば:

  • 擦中国語は 日本語は「サツ」
  • 詞中国語は 日本語は「シ」
  • 草中国語は căo 日本語は「ソウ」

ですから、中国語も韓国語も習ったことのない日本人からすると、「東倉里」が「トンチャンリ」となるのは不思議かもしれませんが、我々のように中国語を勉強している人からすると、そんなに不思議ではないですよね。

みなさんも、中国語の漢字音と日本語の漢字音を色々比べてみてください。結構楽しいですよ。韓国語の漢字音も分かると、ますます面白いです。

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

  • 文法から学べる中国語
  • 中国語!聞き取り・書き取りドリル
  • CD付き 文法から学べる中国語ドリル
  • 中国語検定対策4級問題集
  • 中国語検定対策3級問題集
  • ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本

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