翻訳会社インターブックスは品質、スピード、価格で中国語翻訳にお応えします

翻訳コラム

COLUMN

第231回俺がついている

2015.03.25
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

よく、だれかを励ますような場面で「心配するな、俺がついているから!」というような言い方をしますよね?

これ、中国語ではどう言うでしょうか。

别担心,有我呢!
bié dān xīn, yŏu wŏ ne

この「有我呢」という言い方、ちょっと不思議な気がしませんか?

例えば、「私はここにいます」というのであれば、ふつう動詞は「有」ではなく「在」を使って

我在这里。
wŏ zài zhè li

と言うでしょう。もし次のように言うと、ちょっとニュアンスが違ってきます。

这里有我。
zhè li yŏu wŏ
ここには私(という人)がいる。

ですから「自分が(ここに)いる」ということを言う時は、ふつう「我在这里」というのです。また、「●●さんはいますか?」と尋ねられて「います!」と答えるのであれば、次のように言うのが普通でしょうね。

●●先生在吗?-我在这儿!
xiān sheng zài ma ?-wŏ zài zhèr !

しかし、冒頭の「俺がついている!」というような場面で使う中国語は「有我呢」となります。こういう場面で「我在呢」とは、ふつう言わないでしょうねぇ。

ちょっとこの言い方について考えてみたいと思います。

そもそも、「在」と「有」の使い分け、みなさんご存知でしょうか。ちょっと整理しておきましょうね。

●在

あるモノ・ヒト等が、どこに存在しているかを述べる。
例:面包在这里。
miàn bāo zài zhè li
パンはここにある。

●有

ある場所にどんなモノ・ヒト等が存在するかを述べる。
例:这里有面包。
zhè li yŏu miàn bāo
ここにパンがある。

つまり、後者「有」の文では、主語は「あるモノ・ヒトの存在する範囲(もしくは、あるモノの所有者)」を表す言葉なのです。(この例文では「这里」)

ということは冒頭でご紹介した「有我呢」の「有」の前に省略されている主語は、「我」の存在する範囲を表す言葉が省略されている、ということになりますね。

文脈からその主語を補って訳してみると、「(励ましている相手のすぐそばには、)自分という人間がいる」という感じでしょうか。

逆にもしこのようなことを「在」を使って言うならば、

我在这里呢。
wŏ zài zhè li ne
私はここにいるよ。

とか、

我在你的旁边呢。
wŏ zài nĭ de páng biān ne
私はあなたのそばにいるよ。

と言うことになるのでしょうが、前者「我在这里呢」では「あなたのそばにいる」というようなニュアンスは出ないですよね。後者「我在你的旁边呢」なら、ニュアンスはばっちりですが、ちょっと長い。

「俺がついている!」というような力強いセリフは、やはり簡潔に言いたいですものね。ですから「有我呢」という表現が、こういう場面ではふさわしいのだろうと思います。

「有我呢」・・・言葉少なで多くの含みを持つ、なかなかに面白い表現ですね〜。他にもこういうものがあればまたご紹介します。

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

  • 文法から学べる中国語
  • 中国語!聞き取り・書き取りドリル
  • CD付き 文法から学べる中国語ドリル
  • 中国語検定対策4級問題集
  • 中国語検定対策3級問題集
  • ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本