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翻訳コラム

COLUMN

第232回手抜きの方法

2015.04.01
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

我々日本語ネイティブの人間からすると、中国語の声調って厄介ですよね。僕はもう20年以上中国語をやっているので、逆に声調がわからないとどうやって発音していいかわからず、戸惑います。数年前に韓国語を勉強してみたのですが、声調がないからどんなふうに発音すればいいかわからなくて困りました(苦笑)。

それはさておき、中国人だって、いつもいつも完璧に声調をつけて発音しているわけではありません。あまりにがんじがらめに声調をつけて発音したら、それこそコンピュータの音声のようで、感情が込められませんよね。だから、大事な音はしっかり発音しつつ、大事でない音は適当に手を抜いて発音するわけです。

ただ、どれが大事でどれが大事でないか、それは僕たち外国人が勝手に決めてはいけません。

また、大事でない音を発音する時の手の抜き方も、中国人独特の方法があり、日本人ふうの手の抜き方をやると、通じなかったり、相手に違和感を与えたりするようです。今日は中国人の手抜きの方法を探ってみましょうか。

まず、どの音が大事でないか、ですが、1音節や2音節の単語ではわかりにくいですね。3音節以上の単語だと、比較的はっきりと傾向が見て取れます。

我々日本人は単語のお尻に向かってだんだん手を抜いていく傾向にあるでしょう?例えば「西遊記(さいゆうき)」という小説(孫悟空のお話ですね)の名前は「さい」あたりがとても強く高く発音されますが、最後の「き」の部分は弱く低く発音され、場合によってはあまり聞こえなくなりますよね?

しかし、中国語ではどうでしょうか。同じ小説の名前「西游记(xī yóu jì)」で見てみましょう。

これ、中国語を学び始めて間もない日本人に読んでもらうと、どうしても日本語の「さいゆうき」と同様に「」の部分で力が抜けてしまう人が多いように思います。

でも、実際に中国人が発音しているのを聞くと、そうでもないんですよね。彼らはむしろ「」の部分は強く読んでいるように思います。

むしろ、手を抜いているのは真ん中の「yóu」の部分です。

ところが、日本人に「yóu」の部分で手を抜いて発音するようにお願いして発音してもらうと、第2声のようにずりあげずに低い感じで発音し、軽声もしくは第3声のように発音してしまうようです。(「xī yŏu jì」のように)

中国人の手の抜き方は、実はそうではないのです。手を抜いて全体を低く発音するのではなく、第2声の出発点をあまり低くせずにずりあげ方を狭くして、結果的に「yóu」の部分はずっと高いまま(つまり第1声のような状態)になるのです。

(正)xī yóu jì→(手抜き)xī yōu jì

例えば「刘成林」という人がいたとしましょう。この人の名前はどう読みますか?

そう、正しくは「liú chéng lín」。全部第2声ですね。こういう人名の場合でも、真ん中は手を抜いて発音するのが普通です。でも手の抜き方は日本人のそれではなく、中国人風。つまり、この場合も2文字目の第2声は第1声ふうに発音します。

(手抜き)liú chēng lín

僕の大好きな三国志、中国語では「三国演義」ですが、これもこんなふうになります。

(正)sān guó yăn yì→(手抜き)sān guō yăn yì

もっとすごい例として、こんなのがありますよ。

我比你小五岁。(私はあなたより5歳年下です。)

正しい発音は wŏ bĭ nĭ xiăo wŭ suì

最後の字以外は全部第3声!第3声は2つ以上続くと最後の第3声以外は第2声に変調しますから、実際の発音は次のようになるといわれますよね。

(実際の発音)wó bí ní xiáo wŭ suì

しかし、第2声がこれだけたくさん続いては、さすがの中国人もしんどいようで、手を抜いて発音することになります。その発音は以下の通り。

(手抜き)wó bī nī xiāo wŭ suì

実際には第3声のはずの「比」「你」「小」の部分が、それぞれ第1声に近くなってしまうのです。びっくりですよね!

時々「第2声のはずが第1声に聞こえるんですよ、私の耳がおかしいのでしょうか」というような趣旨の相談を受けることがあるのですが、実はそういう人はかなり耳がいいのですよ。どうか自信を持ってください。

今日は第2声が第1声かのようになってしまう手抜き例を列挙しましたが、他の声調でも単語の中間部は力が抜ける傾向にあるようです。また機会があればそんな話もしたいと思います。

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

  • 文法から学べる中国語
  • 中国語!聞き取り・書き取りドリル
  • CD付き 文法から学べる中国語ドリル
  • 中国語検定対策4級問題集
  • 中国語検定対策3級問題集
  • ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本

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