翻訳会社インターブックスは品質、スピード、価格で中国語翻訳にお応えします

翻訳コラム

COLUMN

第269回挨拶の意外な落とし穴

2016.01.13
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

中国語や英語の挨拶言葉、皆さんも覚えたことでしょう。語学学習が始まって間もない時、難しい文法など分からなくてもとりあえず覚えておけば使えますし、それだけで簡単な会話が成立するのですから、楽しいですよね。

しかし、その挨拶言葉の本来の意味、元々の意味を知らないでその言葉を使うと、相手が戸惑ったりすることもあります。入門期にはあまり意味を考えずに挨拶言葉を覚えてしまうので、何語を勉強していてもこういうことはあるようですね〜。

先日、日本語教師の経験談を漫画にしてある本を読みました。その中で、イギリス出身の留学生の話が紹介されていました。

日本に来たばかりだった彼があるお店に入った時のことです。店員さんがすかさず「いらっしゃいませー!」と挨拶したそうです。すると彼はその店員さんに向かって「いらっしゃいませ」と返したそうです(笑)。

彼の母国イギリスでは、お店で店員から「ハロー」と言われたら、客も店員に「ハロー」と返すのが普通だそうです。だから彼も日本で「いらっしゃいませー」と言われたのでそのまま同じ言葉を返したというのですね。

そう、こういうことが挨拶言葉では時々起こります。それは挨拶言葉の元々の意味を覚えていないからなのでしょう。

例えば上の例でいくと、「いらっしゃいませ」は「いらっしゃる」という動詞に丁寧語の「です・ます」の「ます」をつけて「いらっしゃいます」とし、それを命令形にしているのですね。「いらっしゃる」は「来る」とか「行く」の尊敬語ですので、「いらっしゃいませ」をふつうの言葉に訳すと「来てください」くらいの意味です。

つまり、お客さんが来たから「どうぞ来てください。どうぞ入ってってくださいよ!」というようなつもりで「いらっしゃいませ」と言っているわけですね。ですから、その言葉をお客が店員に言うと変です。しかも尊敬語を使っていますし(笑)!

中国語の挨拶も、意味や用法をある程度知っていなければ相手に違和感を与えたり、場合によっては笑われたりすることもあるかもしれません。まぁ語学学習なんて笑われてナンボの世界ではありますけどね(笑)。

例えば、「おはよう!」という意味でよく紹介される中国語は、どんなものがあるか覚えていますか?

你早!
nĭ zăo

早!
zăo

早上好!
zăo shang hăo

これらは、訳すとなると「おはよう」以外にはないと思うのですが、日本語の「おはよう」と全く同じように使っていいかというと、そうでもありません。

ある時、中国語の相当できる日本人が、友達の中国人に「早!」と挨拶したところ、その中国人が「え〜、そんなに早くないですよ〜。」と言っていました。

実はこれ、午前10時ごろの話なのです。

日本だと、午前中ならいつだって「おはよう」と言えますよね?まぁさすがに11時30分とかに「おはよう」だと違和感を覚える人もいるかもしれませんが、10時くらいなら多くの人が違和感なく「おはよう」という挨拶を受け入れるでしょうし、自分でも相手に「おはよう」と言うのではないでしょうか。

しかし中国語の場合は、10時くらいだともう「早」ではないようです(笑)。「早」は読んで字のごとく「(時間が)早い」という意味ですから、中国人が「朝だ」と思う時間帯しか使えないようです。

以前、中国では時間を6つくらいに分けているらしいという話を書いたことがありましたが、ずいぶん前のことなのでもう一度書きます。

  • 夜明け?〜8時台くらい…早上 zăo shang
  • 9時代〜11時台くらい…上午 shàng wŭ
  • 12時台くらい…中午 zhōng wŭ
  • 13時台〜17時台…下午 xià wŭ
  • 18時台〜日付変わるくらい…晚上 wăn shang
  • 深夜…夜里 yè li

つまり、早朝から9時前くらいまではまだ「早上」とする人が多いようなので、この時間帯なら「早!」とか「早上好!」と言ってもよさそうです。でも9時を過ぎると言いにくくなってくるようですね。なかなかに面倒ではありますね(笑)。

他にもたくさんの挨拶言葉や謝罪の言葉、お礼の言葉などがありますから、一つ一つ、本当はどういう意味なのか、直訳してみて意味を探ると色々面白いことが発見できるかもしれません。何か分かったら教えてくださいね。

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

バックナンバー

記事一覧