翻訳会社インターブックスは品質、スピード、価格で中国語翻訳にお応えします

翻訳コラム

COLUMN

第277回キンコン

2016.03.09
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

先日、友人がツイッターでおかしなことをつぶやいていました。

曰く、「ホンコンはアルファベット表記だとHong Kongと書くのに、どうしてキングコング(King Kong)はキンコンって読まないの?」

お〜、そう来たか〜、と思いました(笑)。

このつぶやきに対しては、色々な「ボケレス」がついていて、とてもそこに「マジレス」を書く勇気はありませんでしたので、こちらで書くことにします(笑)。

といっても皆さんならもうご存知ですよね?

中国語や韓国語など、アジアの言語には、アルファベット表記だと「-ng」で終わっているのに実際の発音は「-ン」のようになっていることがありますよね。少なくとも中国語にはあります。

Hong Kongというのは「香港」という2文字を広東語の発音で読んだ場合の発音表記です。中国語の標準語(普通話)で読むと「xiāng găng」となります。子音や母音はずいぶん違いますが、最後が「-ng」で終わる点は広東語と同じことのようですね。

しかし実際にはこの「-ng」を「-ング」と読むことはありません。「-ング」というつもりで「-ン」までしか発音しないのですよね。

例えば日本語の中で言うと、「マンゴー」という時の「ン」にあたりますね。「マンゴー」という時の「ン」は舌の奥の方をノドビコのほうに持ちあげて「ん〜」という感じ。それに対して例えば「サンタ」という時の「ン」は舌先が上の前歯の裏辺りに当たっています。中国語ではこの両者を意識的に発音し分けます。前者(「マンゴー」の「ン」に相当する音)は「-ng」、後者(「サンタ」の「ン」に相当する音)は「-n>」と表記しています。例えば:

「东京 dōng jīng」「电影 diàn yĭng」「当然 dāng rán」「完全 wán quá」「晴天 qíng tiān」「眼镜 yăn jìng」「长城 cháng chéng」「印象 yìn xiàng」等々。

日本語ではみんな無意識にやっていますね。カ行やガ行の前にある「ン」は中国語でいう「-ng」の音になります。でも「-ng」の発音だからといって誰も「マンゴー」を「マングゴー」とは読まないし、「単語(タンゴ)」を「タングゴ」とは読みません(笑)。

同様に、香港は「シアンガン」のような発音であり、「シアングガング」ではありません。広東語で読んでも「ホングコング」ではなく「ホンコン」と読むのです(笑)。

しかし、キングコングは別です。これは英語ですからね。

でも、実は英語で「-ng」で終わる単語も、限りなく中国語の「-ng」に近い発音のようです。つまり、「ング」とは言っていないらしいですね。

発音記号を見ると、最後に「g」の音を表す記号はついていません。だから、「King Kong」も、より正しい発音を表記するなら、「キンコン」のほうが近いかもしれませんよね(笑)。

「-ng」の話題なのでついでに書きますが、まだ有名でないとあるバンドのメンバーたち。彼らのバンド名は、確か日本風の名前でした。仮に「牡丹(ぼたん)」とでもしておきましょう(笑)。その「ぼたん」のアルファベット表記を「Botang」のようにしていたのです。

何かのテレビ番組で司会者に「どうして最後にgをつけているのですか?」と尋ねられたそのアーティスト、なんと答えたと思います?

「アジアではよくnの後にgがついてて、すっごくカワイくて〜(笑)。だからあたしたちも最後にgをつけることにしました」

う〜ん。gって飾りじゃないんですけど〜(笑)。それに「牡丹」の「丹」という漢字は中国語の発音では「dān」なので、やはりgなんかつきませんしね〜。

もう1つ言いますと、東京某所にある結構高そうな中華料理店、仮に「竹林」と言う名前だとしておきましょう。

ここの看板に書いてあるアルファベット表記も、なぜか、どうしてか、こうなっているのです。

Chikuling

2つほど文句があります(笑)。まず、「チクリン」という日本語読みのローマ字表記風なのに、なぜ「リン」の部分は「l(エル)」を使っているのか。(普通は「r(アール)」を使うでしょう。)

そして、最後の「g」です。なぜ???

「林」という字は中国語読みだと「lín」です。「-ng」ではなく「-n」なのです。それに日本語の「チクリン」をローマ字表記する場合も、最後にgは必要ないはずです。なのになぜlingなの???

高級中華料理店なのに〜!(笑)

皆さんの周りにも、こういう間違いをしている人を見つけたら、教えてあげてくださいね(笑)。

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

  • 文法から学べる中国語
  • 中国語!聞き取り・書き取りドリル
  • CD付き 文法から学べる中国語ドリル
  • 中国語検定対策4級問題集
  • 中国語検定対策3級問題集
  • ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本

バックナンバー

記事一覧