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翻訳コラム

COLUMN

第282回同じでない

2016.04.13
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

先日、ある生徒さんから「不一样 bù yí yàng」を「違う」と訳してしまっていいのか、との質問を受けました。

そうですね〜。確かに「一样 yí yàng」は「同じだ」という意味ですから、その否定形である「不一样」は直訳すると「同じでない」です。それを「違う」と訳しても、果たして大丈夫なのかな?と思ってしまうかもしれませんね。

論理的に考えると、「同じでない」なら「違う」と言ってもいいのに、日本人って「同じではないけど、違うとも言えない」というようなものがあるような気がしてしまいます。なんか「同じでない」というものを「違う」と言い切るのは勇気が必要ですよね(笑)。

でも、中国語の「不一样」や「不同 bù tóng」は、「違う」と訳してしまっていいと、僕は思います。

逆に、中国語で「違う」という意味を表す形容詞や動詞ってあるのでしょうか?

「私は彼とは違う」という文を中国語に訳そうと思うと、まず普通に思いつくのがこんな文ですね。

我跟他不一样。
wŏ gēn tā bù yí yàng

この文の「不一样」の部分を「違う」という意味の別の単語に置きかえようと思っても、何も思いつかないのです。仕方なく日中辞典で「違う」を調べてみると、やはり「不一样」や「不同」「不一致 bù yí zhì」などが出てきましたが、1語の形容詞や動詞は出てきません。不思議ですが、多分「違う」という意味を1語で表す単語は無いような気がします。

「同じ」と「違う」ははっきり二者択一で、「同じとも違うとも言えない」ような状況って無いと思うので、「不一样」を「違う」と訳してもなんら問題はないと思うのですが、「好き」と「嫌い」だとどうでしょう。

これは「好きでも嫌いでもない」という状況がはっきりと存在しますよね。例えば僕は以前納豆が大嫌いでした。臭いしネバネバしてるし、初めて食べた時はとても勇気が要りました。しかし今は食べられるようになりました。でも好きか嫌いかと言われると、どちらでもありません。少なくとも好きではありませんね。毎朝食べていますが、薬だと思って食べているだけで、決して好きではありません。でも嫌いかと言うと、別に嫌いではないのですよね。嫌いだったらいくら体によくても毎朝は食べられないです(笑)。

ですから日本語だと「納豆が好きではない」というのと「納豆が嫌いだ」ではやはり意味やニュアンスが全く同じとは言いにくいですね。

でも「私は納豆を食べるのが嫌いだ」を中国語に訳すとなると、やはりまず頭に浮かぶのはこんな文です。

我不喜欢吃纳豆。
wŏ bù xĭ huan chī nà dòu

「嫌いだ」という単語として思いつくのは、「讨厌tăo yàn」でしょうかね。これももちろん使えますが、結構意味がきついです。「嫌う」「嫌がる」「憎む」くらいまで行きそう。「納豆が嫌い」と言いたい時に使うには、少しきついですよね?だから、やはり「不喜欢」くらいで訳すのが丁度いいと思います。

逆に、日本語でいう「好きではない」くらいのニュアンス(嫌いとまでは言えないが好きではない)を表す時はどうしましょうかね。

我不太喜欢吃纳豆。
wŏ bú tài xĭ huan chī nà dòu
私は納豆を食べるのがあまり好きではない。

これくらいの程度にすればいいのではないでしょうか。

以前にも書いたかもしれませんが、中国語は単刀直入な表現が多い割には、マイナスイメージを持つ形容詞等を使うことはむしろ少ないような気がしています。「嫌い」とはあまり言わないで「好きではない(不喜欢)」と言ったり、「違う」というのを「同じでない(不一样)」と言ったり、「悪い」というのを「よくない(不好)」と言ったりする現象が結構目につきます。

中国語の悪い意味の単語って、そのまま言うとかなりドギツイ表現になってしまうということなのでしょうかね?

辞書を見ているだけでは分からないことって本当に多いです。実際に会話などを通してニュアンスをつかみ、中国人の真似をして実践力を高めていきたいものですね。

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

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