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翻訳コラム

COLUMN

第298回どのくらい〜?

2016.08.10
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

年齢を尋ねる時、どんな風に言いましょうか?

そうですね、色々ありますが、相手がどのくらいの年代でも使えそうなのが「多大」でしょうかね?

多大了?
duō dà le
何歳ですか?

ここで出ている「多」は、後ろに形容詞を伴って「どのくらい〜か?」と尋ねる疑問詞のような働きをしています。つまり「多大」は「どのくらい大きいか」というのが原義ですね。

他にも、距離を尋ねたい場合なんかはこう言いますよね?

邮局离学校有多远?
yóu jú lí xué xiào yŏu duō yuăn
郵便局は学校からどのくらい遠いですか?
(どのくらいの距離がありますか?)

ここでは「多+远」で、「どのくらい遠いか」と尋ねているのです。

このような「多+形容詞」のようにして作る疑問文、どんな形容詞でも使えるかというと、そうでもないようで、『现代汉语词典』(商务印书馆)によると:

大都用于积极性的形容词,如‘大、高、长、远、粗、宽、厚'等等。
(たいていは積極的な意味の形容詞に使われる。例えば「大きい、高い、長い、遠い、太い、広い、厚い」等々。)

つまり、これ以外の形容詞はあまり使われないということのようです。

確かに、この説明に盾つくつもりもないのですが、この表現、実は結構柔軟な使い方もできるようなのですね。

以前、京都や奈良に遊びに行くという中国人と話していると、京都と奈良がずいぶん遠く離れていると思っているらしいことに気づいたので、僕はこう言ったのです。

京都离奈良很近。
jīng dū lí nài liáng hěn jìn
京都は奈良から近いんだよ。

すると、相手の中国人はこう尋ねて来たのです。

有多近?
yŏu duō jìn
どのくらい近いの?

そう、辞書の説明では「積極的な意味の形容詞に使われる」ということで、その例として「远」という形容詞が挙がっていたのに、その反対の意味の「近」が使われているではありませんか!

いや〜、これは僕にとって発見でした。確かに、近いということを話している文脈では「どのくらい遠いか」と聞くのはおかしいですもんね。距離のことを尋ねる時はどんな場合でもとにかく「多远?」と言うのだと思い込んでいたのですが、「近さ」に焦点が当たっているような文脈では「多远」ではなく「多近」と言わねばならないのですねぇ!

また、ある中国人の自伝を読んでいた時のことです。

主人公が小さい頃、お母さんからお母さんの子供時代のお話を聞いていた場面で、主人公がお母さんに「何歳頃の話?」と尋ねるのですが、その時の中国語がこれです。

多小?
duō xiăo

年齢を尋ねる言い方は、普通は「多大」であることを冒頭で述べましたが、ここの文脈では、お母さんがどれくらい小さい頃の話なのかを尋ねたいわけですよね?そういう場合は「多大」より「多小」と言うべきなのでしょう。

やっぱり中国語って不思議で面白いです。漢字の意味がすごく息づいているのですよねぇ。

こういうの、他にもまだまだ気づいていないことがありそうです。どんどん気づいていきたいなぁと思います。

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

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