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翻訳コラム

COLUMN

第325回存現文

2017.02.22
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

中国語検定4級の過去問を見ていて、最近4級でも存現文がよく出て来るようになってきたなと思いました。

存現文ってご存知でしょうか?

そう。ある場所(範囲)にどんな物(人)があるか(いるか)というようなことを述べる文です。例えばこんな文:

门外站着一个人。
mén wài zhàn zhe yí ge rén
ドアの外に人が1人立っています。

このような文の形式上の特徴としては、まず場所(範囲)を最初に言い、その次に動詞、そしてその後に存在する物や人を言うのです。

存現文は、実は存在だけではなく、出現を表すこともあります。つまり、ある場所(範囲)にどんな物(人)が出現したかということを述べるのです。例えば:

我们家来了一只猫。
wŏ men jiā lái le yì zhī māo
私たちの家に猫が一匹来ました。

存現文では、日本語では主語となる言葉が中国語では動詞の後(目的語の位置)に入ることになります。ですので、多くの中国語学習者が間違えてしまうのですね。

例えば次の日本語の意味を表すように中国語の単語を並べてみましょう。

僕たちのクラスに新しいクラスメートが1人来ました。

新同学 我们班 来了 一个

存現文に慣れていないとこんな文を作ってしまうのではないでしょうか?

一个新同学来了我们班。

でもこれは間違いです。正解は存現文を使ってこう言います。

我们班来了一个新同学。
wŏ men bān lái le yí ge xīn tóng xué

「僕たちのクラスに」という場所(範囲)を表す言葉が最初に来て、次に動詞「来」、そして「来た人」である「一个新同学」が並ぶのです。

この「一个新同学」のような、限定されていない物や人(張君でも田中さんでもない、だれかよく分からないけど新しいクラスメート、という意味で「限定されていない人」)は、中国語ではあまり主語の位置(動詞の前)に出てこない傾向があります。ですからこのようなものは存現文を使って動詞の後(目的語の位置)に置くのですね。

存現文、実は結構頻繁に出てきます。実は「有」の文も存現文です(存現文ではないという人もいますが、少なくとも存現文の特徴は備えていると思います)。

房间里有三把椅子。
fáng jiān li yŏu sān bă yĭ zi
部屋の中には椅子が3脚あります。

我有一本中文书。
wŏ yŏu yì běn zhōng wén shū
私は中国語の本を1冊持っています。

(後者の文は存現文と一線を画す人もいますが、「我」という守備範囲(?)に「中文书」が存在していることを表すと考えると、存現文ですよね?)

もし存在するものが限定されたものであるなら、どうなるか。例えば「あの椅子は部屋の中にあるよ」というのであれば、存現文ではなく普通の文を使ってこう言います。

那把椅子在房间里。
nà bă yĭ zi zài fáng jiān li

存現文は、中国語では本当によく見聞きする文です。でも多くの外国人にとっては、主語であるべきものが目的語の位置に入っていることに慣れないのか、ちょっと難しい文法という位置づけのようで、今まで中国語検定4級では「有」の文以外の存現文はあまり出てきませんでした。しかし、ここ4〜5年ほどの間に出題数が少しずつ増えて来ているように見えます。

やはり、難しいからと敬遠していてはいけない、ということなのでしょう。色々な文例を見て、慣れておいてくださいね。

あと、あまりテキストや検定試験では出てこないのですが、存現文には「存在」「出現」の意味以外に「消失」を表すこともあります。例えば:

我们家跑了一只猫。
wŏ men jiā păo le yì zhī māo
私たちの家から猫が一匹逃げました。

「逃げる」ということは、私たちの家からいなくなるので、消失を表す存現文ということになります。

存現文、苦手だなと思う人もいるかもしれませんが、慣れると面白いので(笑)、色々な文に触れて、慣れていってください。最後に僕が一番好きな存現文を皆さんにお贈りします(笑)。

中国出了个毛泽东。
zhōng guó chū le ge máo zé dōng
中国に毛沢東という人が出た。

むかーし(今でも?…笑)よく歌われた『东方红 dōng fāng hóng』という歌の一節です。「毛泽东(毛沢東)」なんていう固有名詞が、しかも超有名人なのに、「个」という量詞を伴って普通名詞化し、それが存現文の目的語の位置に入ってますます「不定化(限定されていない)」され、あたかも中国という広大な大地に毛沢東という1人の英雄が、ポコっと出現したようなニュアンスが出ているように思います。

こんなことはいつでもできるわけではないと思いますが、こういうイレギュラーな文は本当に面白いですね。言語の持つ柔軟性には全くもって脱帽です(笑)。

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

  • 文法から学べる中国語
  • 中国語!聞き取り・書き取りドリル
  • CD付き 文法から学べる中国語ドリル
  • 中国語検定対策4級問題集
  • 中国語検定対策3級問題集
  • ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本

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