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翻訳コラム

COLUMN

第336回世代の話

2017.05.17
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

中国は儒教発祥の地ですから、儒教文化が色々なところで垣間見られます。

特に「世代」というものに対する考え方は、なかなか面白いものがあります。日本にも似たようなことがありますが、ちょっと日本の考え方から見ると不思議なものもあります。

次のような言葉を聞いたことはありますか?

三世同堂
sān shì tóng táng
三世代の家族が同居していること

四世同堂
sì shì tóng táng
四世代の家族が同居していること

「三世同堂」だと祖父母と父母と息子や娘が同居していることになりますね。「四世同堂」だと、曾祖父母がいる家ということになります。日本では「三世同堂」の家はまだありそうですが、「四世同堂」はなかなかなさそうですね。でもこういう家庭のことを、良いものとして見るという観点は、日中両国でほぼ共通しているのではないでしょうか?

でも日本ではよく嫁姑問題が取り上げられ、夫の両親との同居は色々問題がありそうです。

もちろん中国でも色々あるようですが、それでも、日本よりは中国の方が、お年寄りが強いということは言えそうですね。日本だったら最近は若い嫁が我慢ばかりしているということは多くないと思います。

中国では、父母や叔父叔母たちが同じ世代、自分と兄弟姉妹とかいとこたちが同じ世代、というふうに考えます。日本だと年齢で世代を区切ることが多いような印象ですが、例えば自分が生まれた後で自分の祖母がまた子供を授かることがありますよね?そんな場合、自分から見て祖母の子供は年下のおじ(おば)ということになります。こういう「年下のおじさんやおばさん」は、中国では世代としては1つ上になります。たとえ年下でも、です。

そして上の世代の人の権力は絶大です(笑)。下の世代の人ももちろん反抗したりはするようですが、上の世代がそれにおろおろすることはあまりないみたいですね。

先日、年頃の娘を持つ中国人お母さんと話をしていた時、興味深い話を聞きました。中国では年頃の子どもたちの反抗期というのは、それほど問題にならないそうです。

もちろん、思春期の子供ですから色々難しい年頃です。反抗することもあると思います。でも、親はそんなことでおろおろしないで、毅然と対応するのだそうです。そして、散々息子や娘の言い分を聞き一々論破(笑)した後は、ギュッと抱きしめるのだとか。

どの家庭でもそうだとは言いませんが、彼女の話を聞いて、ああ日本は子供に気を使いすぎるのかなぁ、なんて思いました。どっちがいいかはケースバイケースかもしれませんが、やはり感覚がだいぶ違いますよね。やはり、「世代」という感覚が日本より強いからだろうと思ったりしました。

そしてこの「世代」ということを使って相手を尊敬したり貶めたりすることができるのは、中国ならでは、という気がします。

例えば、僕が20代くらいの頃に中国でバスに乗っていた時の話、自分の近くに小さな子供を抱っこしたお母さんが乗って来たので、そのお母さんに席を譲ってあげたら、お母さんはどう言ったと思いますか。日本だったら普通に「ありがとうございます」と言うか、子供に向かって「優しいお兄ちゃんね〜。お兄ちゃんありがとう〜。」みたいなことを言ってくれるかもしれませんが、さて中国ではどうでしょうか。たとえばこんな言葉が予想されます:

快谢谢叔叔!
kuài xiè xie shū shu
(直訳)おじさんに早くお礼言って!

そう、20代でも「おじさん(叔叔)」と呼ばれます。若い女性だったら、「阿姨ā yí」と呼ばれます。この「阿姨」というのは「おばさん」というような意味です(笑)。

ちょっと戸惑うかもしれませんよね〜。まだ若いのに「オジサン」「オバサン」だなんて!と(笑)。

でも、これは実は敬意を込めた表現とされています。

先ほども言いましたが兄弟姉妹は同じ世代に属します。ですから「お兄さん」「お姉さん」だと自分と同世代という扱いになります。相手に「お兄さんありがとう」「お姉さんありがとう」と言っても普通の表現でしかないのですが、ここで1つ上の世代の呼び方「オジサン」や「オバサン」を使うと、「私はあなたを1つ上の世代の人として敬います」という意志表明になるようなのです。これは日本にはあまりない感覚ですよね?(しかし、最近の若い人の中には「叔叔」「阿姨」と呼ばれるのが嫌だという人もいます。こうやって言葉は変わっていくのかもしれませんね。)

そして、逆に相手を自分より下の世代扱いすると、相手を貶めることになります。例えば、、、、こういうところで書きにくい罵り言葉ですが、思い切って書いてみましょう(笑)。

操你妈!
cào nĭ ma1
(直訳)お前の母ちゃんを犯してやるぞ!

下品な言葉を出して本当に申し訳ないですが、こんな言葉にも儒教の思想が垣間見られますね。さっきも言ったように、お母さんは自分たちより上の世代に属します。つまり、相手のお母さんと男女の関係になると、自分は相手より上の世代ということになります。そうすると、相手は自分に従わざるを得なくなるのです。これは相手にとって大きな大きな侮辱になるそうです。

確かに自分の母親を蹂躙されたら、それは人情的にも腹が立ちますが、それ以上に世代という感覚からも大きな侮辱になるのですね。

そしてこんな罵り言葉はご存知ですか?

我孙子
wŏ sūn zi
(直訳)俺の孫

これはもっとストレートですが、相手を「俺の孫」扱いするのですね。孫というのは、自分より2つも下の世代ですから、言われた相手からするとすごい侮辱になるのです。

この「世代」という感覚、かなり中国人にとっては大事なことらしいですね。きっと中国人の日常生活の細かいところに入り込んでいる感覚だと思うので、皆さんも色々観察してみてください。

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

  • 文法から学べる中国語
  • 中国語!聞き取り・書き取りドリル
  • CD付き 文法から学べる中国語ドリル
  • 中国語検定対策4級問題集
  • 中国語検定対策3級問題集
  • ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本

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