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翻訳コラム

COLUMN

第347回あげる、くれる、もらう

2017.08.02
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

日本語って難しい言語なんですってね(笑)。難しい要素は色々あると思いますが、授受表現というのも結構他の言語を話す人たちにとっては難しいようです。授受表現というのは、要するに「あげる」「くれる」「もらう」といった言葉です。

3つとも、客観的に見ると同じ事を言っています。要するにAさんからBさんに何か物が移動することを表しますよね。例えば「ペン」という物が「僕」と「山本君」との間で所有権が移動する様子をこんなふうに言えると思います。

  1. (僕は)山本君にペンをあげた。(「僕」→「山本君」)
  2. 山本君が(僕に)ペンをくれた。(「山本君」→「僕」)
  3. (僕は)山本君からペンをもらった。(「山本君」→「僕」)

この3つの動詞(「あげる」「くれる」「もらう」)の内、どれをどんな時に使うのか、考えると段々混乱してきますね(笑)。それを判断する基準は2つあります。「与える人が主語なのか与えられる人が主語なのか」と「物が私から離れるのか私に近づくのか」です。

まず1番と2番を比べてみましょう。ペンを与える人は、1番の場合は「僕」で、2番は「山本君」です。いずれも主語になっています。つまり、「あげる」と「くれる」は「与える人」が主語になっています。

それに比べて3番の文の主語「僕」は「与えられる人」です。つまり「もらう」は「与えられる人」が主語になるのです。

では、「あげる」と「くれる」はどう違うかというと、「物が私から離れるのか近づくのか」が違います。

1番はペンが「僕」から「山本君」へと移動します。つまり「私から離れ」ます。それに比べて2番はペンが「山本君」から「僕」へと移動します。つまり「私に近づき」ます。

つまり、物が「私から離れる」場合は「あげる」、「私に近づく」場合は「くれる」を使うのです。

これで3つの区別ができますね。しかし、非常にややこしい!我々日本語ネイティブはすごいことを普段からやっているのですね〜(笑)。

こういうのを中国語で言う場合は非常にシンプルです。

中国語では、こういう場合に非常に客観的な立場からの表現をします。それぞれ中国語に訳してみましょうか。

  1. 我给了山本一支钢笔。
  2. 山本给了我一支钢笔。
  3. 山本给了我一支钢笔。

そう、結局、物が誰から誰に移動したかを言うだけです。「与える人」を主語にして、「给」という動詞を使って言えばいいのですね。簡単。

つまり我々日本語ネイティブは、普段「あげる」「くれる」「もらう」を使い分けるために色々考えているのですが、中国語で話す時は「物が誰から誰に移動するのか」だけを考えればよいわけですね。

でも日本語のこういう授受表現は、単に事実を述べているだけでなく、微妙な気持ちをも表します。それは上記のような「物の授受」よりも「動作の授受」とでも言いますか。日本語教育の世界では「恩恵の授受」と言っているそうですが、要するに「〜してあげる」「〜してくれる」「〜してもらう」という言い方で、よりはっきりしてきます。例えば新学期になって大学の英語の先生が変わるというので大学生に「英語の先生はだれ?」と尋ねると、相手はどんなふうに答えますかね?

(私は)勝又先生に英語を教えてもらうんだ。
勝又先生が(私に)英語を教えてくれるんだ。

これ、日本語がまだあまり上手くない外国人の場合、よくこう言うそうです。

勝又先生が私に英語を教えます。

文法的にはちっともおかしくありませんが、こういう言い方は日本語ネイティブはまぁしませんよね(笑)。というのは、「くれる」も「もらう」も少し相手に対して敬意を持っているような、あるいは感謝の念を持っているようなニュアンスがあるので、「くれる」や「もらう」を使って相手(この場合は勝又先生)に対する気持ちまで表現するのが日本風だからです。この文の場合だと、「勝又先生」が「私」に英語を教えるということは、「勝又先生」が「私」に恩恵をもたらすことになり、それは感謝すべきことなので、「くれる」「もらう」を使って表現しなければならないのです。

でも中国語だったらこういう場合はやはりこうでしょうね。

胜又老师教我英语。
(直訳:勝又先生が私に英語を教える。)

我々日本語ネイティブは、これではもしかしたら物足りないと感じるかもしれませんが、そこは我慢です(笑)。「あげる」「くれる」「もらう」「〜してあげる」「〜してくれる」「〜してもらう」という表現を中国語に訳したい場合、誰がその動作をするのか見極めて、その人を主語にして文を組み立てれば、上手くいくのではないでしょうか。中国語はこの点は楽でいいですね。

逆に言うと、こういう日本語のややこしい表現を何気なく使い分けている外国人ってすごいですね!そういう外国人を見つけたら誉めてあげてくださいね♪

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

  • 文法から学べる中国語
  • 中国語!聞き取り・書き取りドリル
  • CD付き 文法から学べる中国語ドリル
  • 中国語検定対策4級問題集
  • 中国語検定対策3級問題集
  • ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本

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