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翻訳コラム

COLUMN

第361回可能補語

2017.11.29
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

先日の中国語のレッスンで、可能補語について勉強しました。

補語は何と言っても中国語文法のハイライト!難しいけどこれが使えるようになるとぐっと中国人に近づけます(笑)。

補語の中でも可能補語は、「動詞+結果補語」と「動詞+方向補語」から作りますから、結果補語や方向補語が分かってからでないと語れません。二重で難しいですよね〜。

そこで、実際に中国人がどんな場面でどんな可能補語を使っているか、映画などで立て続けに可能補語を使っているシーンなんかないかな〜と思って、手持ちの中国映画の中からふと『牧马人 mùmărén』という映画のDVDを手にとって見てみると、うってつけのシーンが偶然あったので授業でそのシーンを見ました。なかなか面白かったです。

そもそもこの『牧马人』という映画、皆さんはご存知ですかね〜。1982年の映画です。もう30年以上前ですね(苦笑)。古いせいか、セリフがゆっくりではっきりしていて聞き取りやすく、学習者にはオススメの映画です。ただ古い映画なので現代中国を知るという意味では全然役に立ちませんが、80年代の中国を知りたい(懐かしみたい…笑)人にはうってつけです。

さてそれでは、可能補語が立て続けに登場するシーンをちょっとご紹介しましょう。

主人公“许灵均 Xŭ Língjūn"は資本家の息子ですが、父親は中華人民共和国成立直前にアメリカに移住して離れ離れ。30年たって父親は息子を探しに中国に来て、馬の放牧をしている地域で小学校の先生をしている息子の消息を得て北京に呼び出します。息子“许灵均"は北京に行く前日、妻の“李秀芝 Lĭ Xiùzhī"と色々話をします。もし父が家族みんなをアメリカに引き取ろうと言ったらどうするかと妻に聞いてみたところ、妻は行かないと言いました。その後の妻のセリフがこれです。

中国这么大住不了,还要去外国?
Zhōngguó zhème dà zhùbuliăo, hái yào qù wàiguó.
中国がこんなにも広くてとても住みきれないのに、外国に行く必要があるの?

“住不了"、面白い表現ですね。“〜不了"は「〜し終わらない」「〜しきれない」「〜しえない」「〜できっこない」と言うような意味で使います。“了"が「終わる」というような意味だと思えば、なんとなくどういうニュアンスで使うのか想像がつきますね。

そして、「アメリカになんか行かない」という妻に対して夫が「じゃ僕が一人で行くしかないな。君はまた他の男性を紹介してもらうといい」と冗談を言うと妻が「バカね、冗談言わないで。」といい、その次にこんなことを言います。

你走不了。我心里有数。
Nĭ zŏubuliăo. Wo xīnlĭ yŏu shù.
あなたは行けっこないわ。私には分かる。

“走 zŏu"は「歩く」という意味ですが、「行く」「その場からいなくなる」「出発する」というような意味を表すこともあります。ここではアメリカに行ってしまってここからいなくなることを表しています。そしてここの“〜不了"は可能性を否定している感じ。つまり「〜できっこない」というニュアンスだろうと思います。

そしてそれを聞いた夫は「なぜそう思うの?」と問いかけ、次のように言います。

你是不是觉得我离不开你?
Nĭ shìbushì juéde wŏ líbukāi nĭ.
君は、僕が君から離れられないと思っているの?

“离开 líkāi"はこれで一つの動詞だというふうに覚えている人もいるかもしれませんが、実は“离 "という動詞に“开 kāi"という結果補語(方向補語という人も)がくっついた形をしています。だから“离不开"という可能補語の形が作れるのですね。

さてそういう夫の言葉に対して妻は「私にはそんな力はない」と言い、次のように言います。

我知道你舍不得小学校里那批孩子。
Wŏ zhīdào nĭ shěbudé xiăoxuéxiào li nèi pī háizi.
あなたが小学校のあの子供たちのことを捨てられないって私は知っているもの。

“〜不得"も可能補語の形をしていますね。「〜するのは不適切だ」「許されない」「差しさわりがある」「〜してはいけない」「〜できない」というような意味を表します。特に“舍不得"はよく使われる表現で、「離れがたい、捨てるに忍びない」というような意味を表します。覚えておくといいですね。

そして妻は「それにあなたはアレを捨てられないでしょ」と言って壁に貼ってある中国全土の地図を指し示します。「地図は剥がしてカバンに入れて持っていけるけど、、、」と言った後、こんなことを妻は言います。

祁连山你背不走,大草原你背不走。
Qíliánshān nĭ bēibuzŏu, dà căoyuán nĭ bēibuzŏu.
祁連山だってあなたは背負っていけないし、大草原だって背負っていけないのよ。

“祁连山"というのは“甘肃省 Gānsùshěng"にある山脈の名前です。“背"は「bēi」と読むと「背負う」という意味になります。“走"はこの場合結果補語として使われていて“背走(背負って行く)"という形を作っており、間に“不"が入って可能補語になっています。

授業で“走"が結果補語として使われることがあるのですか?と尋ねられたのですが、割と頻繁に登場します。例えば、マクドナルドなどで商品をお店で食べずに持って帰ることを、何と言いましたっけ?日本語では「テイクアウト」って言っていますけど、中国語では?いくつか言い方がありますが、“走"を使う言い方があります。

带走
dàizŏu

僕は留学していた時、「テイクアウトしてもいいですか?」というつもりで“可以拿走吗?"と言って怪訝な顔をされたことがあります(笑)。“拿走"の“拿 "も「手にもつ」というような意味なので「持っていく」という意味になるのですが、こちらは「勝手に持っていく」というような意味になるらしく、僕は「万引きしてもいいですか?」というように言っていたようです。そりゃ怪訝な顔しますよね(笑)。

結果補語、方向補語、可能補語、なかなか難しいですが、色々実験して少しずつ慣れていってくださいね。面白い失敗談などありましたら、僕にも聞かせてください。

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

  • 文法から学べる中国語
  • 中国語!聞き取り・書き取りドリル
  • CD付き 文法から学べる中国語ドリル
  • 中国語検定対策4級問題集
  • 中国語検定対策3級問題集
  • ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本

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