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翻訳コラム

COLUMN

第2回特許権取得における日米比較の例(実務上の問題その1)

弁理士・知的財産翻訳検定試験委員 藤岡隆浩
シリーズ「特許法の国際比較」

先ずは、ダブルパテントの観点から日米の実務の相違を見ていきます。ダブルパテントとは、同一の発明について特許出願がなされた場合の取り扱いをどうすべきかという問題です。「同一」の意味にも色々とあるので難しい問題です。
日本のダブルパテントの実務は、特徴的で重複特許の併存を極度に嫌います(特許法39条)。重複特許の併存は、日本では、以下の2つの問題を生じさせるとしています。

(1)実質的な権利期間の延長防止

特許権は、特許出願から20年の期間保護されます(TRIPs協定33条)。しかし、たとえば特許出願人が同一の発明について、数ヶ月おきに特許出願をしたような極端なケースを考えてみましょう。すると、最初の出願で先願権を確保しつつ、後の出願で長い権利期間(特許権の終期)を確保することができます。
米国法は、ターミナルディスクレーマという手続によって、これを解決しています。ターミナルディスクレーマは、最初の出願から20年経過後であって、後の出願で延長された権利期間の終期(ターミナルな権利期間)をディスクレーム(放棄)する宣言書を提出する手続きです。

(2)重複する権利の併存

相互に抵触する独占的権利は、望ましくないとする考え方があります。しかし、米国特許法は、ターミナルディスクレーマにおいて、併せて相互に抵触する特許権の分離移転の権利の放棄も義務づけています。

このような法制度の相違は、実務上の以下の相違をもたらしています。すなわち、日本では、一発勝負でできるだけ広い範囲の特許権を取得することが要請されます。たとえば拒絶理由通知無しの一発特許は、好ましくない実務とされています。
これに対して、米国では、ターミナルディスクレーマと、継続出願制度や一部継続出願制度との相乗効果を利用して、出願人の事業や競業者の状況に応じて、多様な権利取得の実務を可能としています。次回は、このような観点から米国における実務の例を紹介します。

なお、余談となりますが、欧州特許条約は、実質的な権利期間の延長防止をセルフコリジョンで解決する一方、重複する権利の併存を過度に問題視していません。このような観点から、特許法39条に相当する規定は、欧州特許条約には設けられておりません。

藤岡隆浩

弁理士・知的財産翻訳検定試験委員
日本弁理士会 欧州部長および国際政策研究部長を歴任