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COLUMN

第140回 Appleが個人発明家、斎藤氏にまた敗訴

2014.05.01
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子

この一週間の知財ニュースはAppleの個人発明家に対する敗訴です。前もこのブログで伝えましたが、一審の地裁でAppleの侵害が認定され、3億3千万円の賠償が命じられました。そして今回も二審の知財高裁で同様の判断がされました。
iPodのクリックホイールが個人発明家である斎藤憲彦氏の特許を侵害しているという認定です。
一審の東京地裁の判決文(平成19(ワ)2525号)を読んでいますが、150ページにもわたるため、最後まで到達できていません。
クリックホイールはリング状、ドーナツ状のリングでくるくる回して音量を調節し、選曲を行うための装置です。これが斎藤氏の特許(3,852,854号)を侵害しているというのですが、では斉藤さんの特許を請求項1からみていきます。
とりあえずは
「指先でなぞるように操作されるための所定の幅を有する連続したリング状に予め特定された軌跡上に連続してタッチ位置検出センサーが配置され、前記軌跡に沿って移動する接触点を一次元座標上の位置データとして検出するタッチ位置検知手段と、接点のオンまたはオフを行うプッシュスイッチ手段とを有し」
という部分です。

  • タッチ位置検出センサーを配置したタッチ位置検出手段
  • プッシュスイッチ手段

の2つから構成されることがわかります。

判決では絶対座標と相対座標ということがいわれています。絶対座標はx軸とy軸のそれぞれの値で位置を特定し、相対座標ではある基準点からの距離で位置を特定します。斎藤氏の特許は絶対座標に特定しているが、iPodのクリックホイールは始点から接触点までの移動距離を位置データとしているという判断です。もうひとつ出てくる概念が軌跡と接触点の1対1です。1対1は絶対座標上の位置ですが、クリックホイールは相対座標である、速度と方向はクリックホイール上の位置に1対1で対応するものではない、したがって斎藤氏の特許の構成要件にはあたらないとAppleは主張しました。
しかし斎藤氏の特許は絶対座標の位置に限定していないというのが裁判所の判断でした。
そもそも斎藤氏の特許はタッチ位置検知手段とオンオフ手段から構成されます。絶対座標、相対座標というのはタッチ位置検知手段について述べたものです。
このほかにスイッチのオンオフ手段についても色々とあります。クリックホイールは、オフは指の接触圧力により保たれ、つまり指で触っている限りはオフが保たれるが、これを大きな力で押し下げるとオンになり、指を離すとオフになる。ます。つまりオフはオンするための押下より大きな力で保持されています。
そして結局はクリックホイールは、「接点のオンまたはオフの状態が,前記タッチ位置検出センサが検知しうる接触圧力よりも大きな力で保持されて」いるという構成要件に該当するという判断されました。

かなり複雑な判例です。クリックホイールを斎藤氏の特許の構成要件に一つ一つ当てはめています。

今週のポイント

  • Appleの個人発明家、斎藤憲彦に対する敗訴のニュースである。一審の地裁でAppleの侵害が認定され、3億3千万円の賠償が命じられ、今回も二審の知財高裁で同様の判断がされました。
    iPodのクリックホイールが個人発明家である斎藤憲彦氏の特許(3,852,854号)を侵害しているという認定である。

奥田百子

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東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)

著書