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翻訳コラム

COLUMN

第176回トヨタの特許無償開放、米国特許取得件数トップ10に日本企業が4社も

2015.01.15
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子

IFI CLAIMS Patent Servicesが発表した2014年アメリカでの特許取得件数では、トップ10に日本企業が4社も入っていました。キャノン(3位)、ソニー(4位)、東芝(6位)、パナソニック(10位)です。

“IFI CLAIMS® 2014 Top 50 US Patent Assignees"
(http://www.ificlaims.com/index.php?page=misc_top_50_2014)

をご覧ください。
日本国内の出願件数は減っていますが、アメリカでの特許取得では日本は優勢です。日本も特許業界が不況とはいっても、外国出願は活発です。日本の技術は外国に出て行っているのでしょうか。
外国出願が活発ということは特許翻訳者にとっては朗報です。私の予想ではいずれは中堅企業もこのランキングに入ってくるでしょう。今やアメリカ出願はアメリカ特許庁のサイトEFS-Web(http://www.uspto.gov/patents/process/file/efs/)を使って誰でも自宅のパソコンからでもできる、アメリカで特許を取ることの魅力がわかれば、中堅企業のみならず個人でもアメリカ出願を行う可能性があります。そうなると特許翻訳者の出番です。翻訳のみならずアメリカ出願までアドバイスできれば、付加価値は高まります。
このように外国では特許取得が盛り上がっているニュースとは対照的に、トヨタの燃料電池車(FCV)の約5,680件(含、出願中)の特許無償開放が報じられました。アメリカでは特許を目的とした企業の買収合併が盛んですが、テスラモーターズも、電気自動車の特許の無償開放を昨年、発表しました。こうなると特許取得は必ずしもお金を生む手段ではなくなります。
特許を売却する企業があれば、無償解放する企業もあり、各社の戦略、そして製品ラインごとの戦略は様々です。今回のトヨタの戦略は気前がよいとも感じますが、これで燃料電池車市場を盛り上げようとの意図があるのでしょうか。つまり特許がある限り、他の企業は入ってこられない。しかし無償開放すれば他企業も追随してこの市場が盛り上がる。しかも企業のイメージアップにもなります。
私も以前から特許は本当にお金を生む手段なのか?と疑問に思ってきました。まず高いお金をかけて特許を取っても、それが本当にライセンスできるのか? ライセンスしてどれくらいの利益が上げられるのか? そもそも出願料を30万円も払っても特許にならないこともある。日本の出願件数が減少しているのは、独占に対する懐疑、特許取得に対する懐疑だと思っていました。
アイディアを真似されないための手段が特許です。しかしそれだけでなく、特許はライセンスしてロイヤリティーを得る、というお金のなる木でもあります。
しかし特許を無償開放することは、この2つとも放棄することです。アイディアを開放して市場を盛り上げようというのであれば、最初からお金をかけて特許を取らずにアイディアを公開すればよいのですが、特許を取るつもりでいて戦略が変わることもあるし、特許を取れるような発明であるという価値の証明を得てから公開するという意味があるのでしょう。
今後は無償開放という形での特許の活用法が十分出てくるでしょう。特許出願すらせずに技術アイディアを公開する企業があるとすれば、日本での出願件数減少は必ずしも嘆かわしいことばかりではありません。

今週のポイント

  • IFI CLAIMS Patent Servicesが発表した2014年アメリカでの特許取得件数では、トップ10に日本企業が4社も入っている。キャノン(3位)、ソニー(4位)、東芝(6位)、パナソニック(10位)である(“IFI CLAIMS® 2014 Top 50 US Patent Assignees")(http://www.ificlaims.com/index.php?page=misc_top_50_2014)
  • トヨタの燃料電池車(FCV)の約5,680件(含、出願中)の特許無償開放が報じられた。
  • テスラモーターズも、電気自動車の特許の無償開放を昨年、発表した。
  • こうなると特許取得は必ずしもお金を生む手段ではなくなる。
    特許を売却する企業があれば、無償解放する企業もあり、各社の戦略、そして製品ラインごとの戦略は様々である。
  • 今後は官民一体となって営業秘密を保護するという施策であることが「知的財産推進計画2014」からもわかる。
    確かに企業の情報が流出すると、秘密管理は一企業だけの問題ではなくなる。秘密管理の基準も国が統一的な基準を作成し、指導していく必要がある。
  • アイディアを真似されないための手段が特許であり、さらに特許はライセンスしてロイヤリティーを得る、というお金のなる木でもある。しかし特許を無償開放することは、この2つとも放棄することである。アイディアを開放して市場を盛り上げようというのであれば、最初からお金をかけて特許を取らずにアイディアを公開すればよいが、特許を取るつもりでいて戦略が変わることもあるし、特許を取れるような発明であるという価値の証明を得てから公開するという意味がある。
  • 今後は無償開放という形での特許の活用法が十分出てくるであろう。特許出願すらせずに技術アイディアを公開する企業があるとすれば、日本の特許出願件数の減少は、必ずしも嘆かわしいことばかりではない。

奥田百子

「もう知らないではすまされない著作権」(奥田百子監修、中央経済社)3月19日発売!

東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)

著書