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翻訳コラム

COLUMN

第135回ViacomとYouTubeが和解

2014.03.27
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子

小保方氏の博士論文を早稲田大学が本格的に調査に乗り出すとのニュースが本日流れました。100ページの博士論文のうち20ページほどがアメリカのNIHのウエブサイトの記述であったとのことです。もしコピペであると認定されれば、博士号は取り消しでしょうか。
コピペなんてもちろん以前はありませんでした。しかし盗作ということばはありました。コピペと盗作はどう違うでしょう?
盗作は全く同一でなくても、例えば音楽の雰囲気が似ているだけでも盗作といわれることもあり非常に曖昧な概念です。しかし小説の場面設定が似ているとか、音楽の雰囲気が似ているだけでは著作権侵害ではありません。
しかしコピペは、コピー&ペーストをパソコンで行うので正に一字一句違わないことになります。これが著作権の複製権の侵害です。コピペした後に単語をところどころ変えても同一性の範囲に入ります。
音楽でコピペということはあるでしょうか?他人の音楽をそのままコピーして自分の音楽の一部とするのも複製権の侵害です。しかし他人の音楽のコピペというのはあまり言われていません。音楽には紙の楽譜があり、これをパソコンでコピペするというはあまり考えられないからです。
音楽についていわれるのはむしろ違法なアップロードの問題です。そこでアメリカのニュース登場です。
Google傘下のYouTubeとViacomが違法コンテンツをめぐって争っていましたが和解しました。YouTubeには違法コンテンツがあるとして、ViacomはYouTubeに対し10億ドルの損害賠償を請求していました。しかし2013年4月にViacomの訴えはニューヨーク連邦地裁では却下されており、Viacomはこれに対して控訴していました。
しかし和解といってもどういう内容で和解されたかは明らかにされていません。
コピペと違法アップロードが異なるのは、コピペは他人の著作を自分名義の著作として発表するためにコピーすること、これに対し違法アップロードは他人の著作を他人の著作として許諾をもわらずにコピーしてアップロードすることです。他人の著作を他人名義でアップロードするのだからよいというのではありません。
ここにはアップロードという行為の特殊性があります。つまりネット上で配信できる状態にしてしまうことです。インターネットという特有の手段が現れることにより、アップロード、ダウンロードという特有の行為態様が現れるようになりました。つまり他人の著作を日本中どころか世界中の公衆の目に一瞬にして晒すことができるのです。これは考えてみればおそろしい行為です。
これまで新聞や雑誌、書籍などのマスメディアは特定の人しか利用することができませんでした。しかしインターネットは今日ほとんどの人が利用する一般的なマスメディアであり、しかも誰でもがこれにアップロードすることができます。つまり誰でもが公衆の目に触れる状態に置くことができるのです。
違法アップロードは、著作者の許諾を得ずに他人の著作を公衆が閲覧できる状態にするので問題となります。つまり他人の著作を許諾なくテレビで放映するようなものです。 ではなぜ他人の著作を許諾なく公衆が閲覧できるようにしてはいけないのか?
これはやはりお金です。したがって違法ダウンロードで要件になるのは有償著作物であることです。つまり対価を支払うべき著作物で例えば、市販のCDやゲームソフトです。違法アップロードは、他人の著作物を対価を払わずに公衆が観られる状態にしてしまうのです。また著作物を無断で公衆の目に触れさせることを著者が望まない場合も多いという事実もあります。私は自分の著作物をアップロードしてくれたら宣伝になると考えますが、必ずしもこれを望まない著作者もいるからです。

ところで佐村河内氏によるゴーストライターの問題は著作権との関係はどうでしょうか? これは氏名表示権の問題になります。ゴーストライターは実際は別の人が作曲している、描いているのですが、著作権法には氏名表示権という著者の氏名を表示する著作者の権利があります。しかしゴーストライターでも実際に作者が氏名を表示しなくて良いといっているのであればOKです。

今週のポイント

  • 小保方氏の博士論文を早稲田大学が本格的に調査に乗り出すとのニュースが本日流れた。100ページの博士論文のうち20ページほどがアメリカのNIHのウエブサイトの記述であったとのこと。
  • Google傘下のYouTubeとViacomが違法コンテンツをめぐって争っていたが和解した。YouTubeには違法コンテンツがあるとして、ViacomはYouTubeに対し10億ドルの損害賠償を請求していたが、2013年4月にViacomの訴えはニューヨーク連邦地裁では却下されていた。これにViacomが控訴していた。

奥田百子

東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)

著書

  • もう知らないではすまされない著作権
  • ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
  • 特許翻訳のテクニック
  • なるほど図解著作権法のしくみ
  • 国際特許出願マニュアル
  • なるほど図解商標法のしくみ
  • なるほど図解特許法のしくみ
  • こんなにおもしろい弁理士の仕事
  • だれでも弁理士になれる本
  • 改正・米国特許法のポイント