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翻訳コラム

COLUMN

第199回またまた三国志

2014.08.06
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

困った時の神頼み、ならぬ、三国志頼み(笑)。

今日も三国志関連の言葉をご紹介したいと思います。興味のない読者の皆さん、すみません。

さて、三国志関連の言葉をメルマガでご紹介する時はいつも「歇后语 xiē hòu yŭ」ですね〜。四字成語もあることはあるのですが、気のせいか「歇后语」が非常に多いようです。

「歇后语」はいわば言葉遊びですから、四字成語よりも庶民的なのかもしれません。三国志は明清代の娯楽ですから、より庶民的な「歇后语」が多く作られたのも無理からぬことだったのでしょうね。

というわけで、今日も三国志関連の「歇后语」をご紹介します。

先に「歇后语」のことを簡単に紹介しますね(前にも書きましたが)。

孔夫子搬家
kŏng fū zi bān jiā
孔子の引越し

と、まず言います。でもこれは表面的な意味だけではなく、裏の意味があるのです。この場合の裏の意味とは:

尽是书。(尽是输。)
jìn shì shū
直訳:すべて本ばかり(すべて負けばかり)。

つまり、「书 shū (書籍)」と「输 shū (負ける)」が同じ音なので、それを利用したしゃれ言葉です。孔子様が引越しするなら、荷物は「书」ばかりだろう、というところから「尽是书。(すべて本ばかり)」→「尽是输。(すべて負けばかり)」となるわけです。

「歇后语」とはつまり、先に一言だけ言って、「そのこころ」を後で聞いている人に考えさせるような、一種の言葉遊びなのです。今日は1つだけご紹介します。

周瑜打黄盖

zhōu yú dă huáng gài
(直訳)周瑜が黄蓋を打つ

その心は?

「一个愿打,一个愿挨。」
yí ge yuàn dă, yí ge yuàn ái
1人は打つことを願い、1人は打たれることを願う。
→お互い納得ずく、という意味

三国志のハイライトといってもよい「赤壁の戦い」は、映画『レッドクリフ』を見て詳しくなった方も多いでしょうね。

この戦いで呉軍を率いていた将軍は「周瑜 zhōu yú」という人です。『レッドクリフ』ではトニーレオン(梁朝偉)が演じていましたね。

「周瑜」は曹操軍を火攻めにするために色々工作を考えていましたが、呉軍から曹操軍へ偽りの投降をする人が必要でした。それも曹操側に本当の降伏だと信じさせるため、一芝居打たねばなりません。

さて一体誰を曹操軍に投降させるか、考えているところへ、「黄盖 huáng gài」という老将軍が「周瑜」のところを訪れ、自分が曹操軍に偽りの投降をすると申し出ます。

その後、「周瑜」は将軍たちを集めて「いよいよ曹操軍へ打って出る。おのおの軍船に3か月分の兵糧を積み込んでおくように。」と命令したところ、「黄盖」が立ち上がり「必勝のあてもない命令を下して兵士たちを危険にさらすなど、まかりならん。」と大反対。

「周瑜」はそれを聞いて激怒し、「黄盖」を斬れと命じますが、周りが命乞いをするので何とか気を鎮め、棒打ち100回という命令を下します。

「黄盖」は衆人環視の下、100回の棒打ちに耐えるのですが、、、実はこれこそが偽りのイザコザ。呉軍内にも当然曹操の密偵が放たれていますので、そういうイザコザが呉軍内にあったことを曹操に知らせるための大芝居です。

「黄盖」はその後、曹操軍に兵糧や武器弾薬などを船に積んで投降することを申し出、曹操は騙されてそれを信じてしまいます。そして実際には「黄盖」は、船に枯れ芝や硝煙などを積み込み、それに火を放って曹操軍に体当たり、曹操軍は火の海となり、呉軍は大勝利を収めるのでした。

上記の「一个愿打(1人は打つことを願う)」とは「周瑜」のこと、「一个愿挨(1人は打たれることを願う)」とは「黄盖」のことを指すのですね。100回の棒打ちは、実は互いに納得ずくであった、ということです。

ちなみに、「黄盖」がその肉体を棒で打たれることは、「苦肉计 kŭ ròu jì」と言われています。そう、日本語で言うところの「苦肉の策」ですね。三国志の言葉は日本語にも多大な影響を及ぼしているようです。

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

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