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翻訳コラム

COLUMN

第235回訳し戻し

2015.04.23
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

中国語(に限りませんが)を勉強する時って、どうしても中国語から日本語に訳すという作業が多くなりますよね。どの中国語のテキストも、テキスト本文は中国語が書いてあるので、日本語に訳す練習をしたくなるように作られています(笑)。

しかし、本当は、中国語を見て日本語に訳す(もしくは訳さないまでも中国語の意味を解する)よりも、中国語を話す、中国語を書く、というのが目的である人のほうが多いだろうと思います。なのに、中国語の授業の中でそれをする時間は意外と少ないかもしれません。

だから、みなさんは(伊藤も含めてですが)、テキストの中国語を日本語に訳す時に、逆のことも考えてみるようにするといいと思います。つまり、「この中国語は日本語ではこういうような意味なんだなぁ。だったら逆に、日本語でこう言いたい時はこの中国語を言えばいいんだね。」というふうに。

例えば。。。

我每天坐公共汽车上班。
wŏ měi tiān zuò gōng gòng qì chē shàng bān
私は毎日バスで出勤します。

この日本語の「バスで」の「〜で」、実は中国語に訳すと色々な動詞に変化します。この例文では「坐 zuò」になりましたね。この「坐 zuò」はもともと「座る」という意味なので、座席に座って乗る乗り物にしか使えません。もし自転車で出勤するのであれば、こうなります。

我每天骑自行车上班。
wŏ měi tiān qí zì xíng chē shàng bān
私は毎日自転車で出勤します。

つまり、自転車のようにまたがって乗る場合は「骑 」になるのです。では、もし自分で車を運転して出勤するという意味で「車で出勤する」というのであれば、どうなるか分かりますか?

我每天开车上班。
wŏ měi tiān kāi chē shàng bān
私は毎日車で通勤します。

そう。「开 kāi」を使うことになりますね。

また、同じ「〜で」でも、「中国語で手紙を書く」とか言う時の「〜で」は、当然「坐」でも「骑」でも「开」でもありません。

我用中文写信。
wŏ yòng zhōng wén xiě xìn
私は中国語で手紙を書きます。

そう、「用 yòng (使う)」を使って「中国語を使って」というような言い方になるのです。

このように、日本語では同じ「〜で」でも、中国語ではそれぞれ適切な動詞を選ばなければならないのです。ですから、テキスト等でそのような表現を見た時に、「日本語で『自転車で』って言いたい時は『骑』を使うんだな〜」というふうにチェックしておく必要があります。でないと、いざ「自転車で行く」のようなことを言いたい時に「骑」が出てこないかもしれませんからね。

同じように、日本語の「教える」という動詞について考えてみましょう。

日本語で「教える」と聞けば「教 jiāo」という動詞を真っ先に思い出す人が多いと思います。例えば:

请教我英语。
qĭng jiāo wŏ yīng yŭ
私に英語を教えてください。

では、「私に電話番号を教えてください。」だったらどうなりますか? やはり「教 jiāo」を使いますか?

実は、この場合は「教 jiāo」は使えないのです。「教jiāo」という動詞は、知識や技能等を教える場合には使えるのですが、情報等を「教える」時には使えないのです。では、どうすればいいかというと、「伝える」という意味の動詞を使うのです。つまり:

请告诉我你的电话号码。
qĭng gào su wŏ nĭ de diàn huà hào mă
私にあなたの電話番号を教えてください。

そう。「告诉 gào su (告げる、伝える)」を使うのです。「告诉 gào su」は日本語に訳す時「教える」と言った方がしっくりくることが結構あるのです。

ですから「请告诉我你的电话号码。」という表現をテキスト等で見て、それが「…教えてください」という意味だと知った時に、逆に「電話番号を教えてください」ということを中国語で言いたい時のことを想定して「日本語の『教える』は『告诉 gào su』と言った方がいい場合もあるんだ!」とチェックしておく必要がありますね。

中国語の授業を漫然と聞いているだけでは、話せるようにはなりません。テキスト本文には中国語が書いてあるので、中国語を日本語に訳すのはうまくなるかもしれませんが、日本語を中国語に訳すのは意外と練習が足りていないので、自分で工夫する必要があります。その1つの方法として、中国語の本文を見て日本語に訳すだけではなく、その日本語を中国語に訳し戻すという練習もとってもオススメです。今日のメルマガでご紹介したように、日本語で同じ表現でも中国語では別の言葉で訳さなければならないことも多々あるからです。

訳し戻しって、実は入門期だけでなく、通訳や翻訳の勉強にも役立つので、中級レベルや上級レベルのみなさんも是非やってみてくださいね。

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

  • 文法から学べる中国語
  • 中国語!聞き取り・書き取りドリル
  • CD付き 文法から学べる中国語ドリル
  • 中国語検定対策4級問題集
  • 中国語検定対策3級問題集
  • ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本