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翻訳コラム

COLUMN

第244回結果補語の「好」

2015.06.24
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

中国語の文法の中で一番難しいのは、やはり補語だと思います。結果補語や方向補語を的確に使いこなせるようになりたいものですよね〜。
今日は、結果補語の「好 hăo」に焦点を当ててみたいと思います。
まずは結果補語のおさらいから始めましょうか。
結果補語とは、動詞の直後にくっつき、その動作を行った結果どうなったか、ということを表す成分です。たとえば:

写完 xiě wán

これの場合、「写(書く)」という動作を行った結果、その動作が「完(終わる)」になる、ということを表します。つまり、「書き終わる、書き終える」という意味になるのです。

学会 xué huì

これは、「学(学ぶ)」という動作を行った結果、その学んだことが「会(できる)」になる、ということ。すなわち、「マスターする、学びとる」というような意味になります。
では、「好」が結果補語になったらどういう意味を表すのでしょうか。
「好 hăo」は、ふつうは形容詞です。「良い」「素晴らしい」「元気だ」というような意味で使いますよね。入門期に必ず習う単語ですから、みなさんもよくご存知のことだろうと思います。
しかし、この単語が動詞の直後に置かれて結果補語となっている場合は、「その動作を行った結果、良い状態で終わる」、すなわち、「その動作がしっかりと完遂される」という意味になります。例えば:

吃好 chī hăo

これは「吃(食べる)」という動作がしっかりと完遂される、つまり「きちんと食べる」という意味になります。決して「好きなものを食べる」という意味ではないので、気をつけてくださいね(笑)。

完遂されることを表すので、「完 wán」という結果補語と似たような意味にはなります。上記「写完」も「好」を使って「写好」と言っても同じように「書き終わる」ことを表します。しかし少し違うのは、「写完」は単に「写(書く)」という動作が終わることを表しますが、「写好」だと「きちんと書く」というところに焦点が当たります。書いた内容がいい加減な状態だと「写好」にはならないわけですね。

数年前、丁度尖閣諸島の問題が起こって反日意識が高まっていた時、北京で起こった丹羽中国大使(当時)公用車国旗抜き取り事件、覚えておられますか?あの事件が起こった時、中国のネット上では犯人たちを擁護する書き込みがいくつも出ていたそうです。日本のニュースでもその話題が報道されていて、その中で「我々の英雄を守れ!」というネット上の書き込みが例として挙げられていました。
普通に「我々の英雄を守れ!」を中国語に訳すと

保护我们的英雄!
băo hù wŏ men de yīng xióng

となると思います。しかし、そのニュースの時にテレビ画面に出たインターネット掲示板上の文字はこうでした。

保护好我们的英雄!
băo hù hăo wŏ men de yīng xióng

そう、「保护 băo hù (保護する、守る)」という動詞に「好」という結果補語がついていたのです!
「好」があっても無くても、日本語訳は特に変わることはないでしょう。どちらも「我々の英雄を守れ!」となると思います。しかし「好」があると、「保护(保護する、守る)」という動作を最後までしっかりとやり遂げる、というニュアンスが入ります。
つまり結果補語「好」がついているほうは、ニュアンスまで含めて訳すと「我々の英雄を最後まで守りきれ!」というような意味なのですね。
たった1文字ですが、なかなかおろそかにはできませんね。1文字であってもその意味を無視せずにいたいなぁと、改めて思いました。

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

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