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翻訳コラム

COLUMN

第257回口が狭い

2015.09.30
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

伊藤は2008年4月から2009年3月まで、NHK国際放送局中国語放送の中国語アナウンサーをやっていましたが、その後制作の方に移って、番組を作ったり原稿のチェックをしたりしていました。

そして2013年4月から、またアナウンサーの仕事もさせてもらっています。

アナウンサーの仕事をすると、自分の声を放送で客観的に聞くことになりますが、色々甘いなーと思うことが多く、反省しきり。もっと質を高めていきたいと思う日々です。

さて、先日、収録本番前に中国語の発音をちょっと他のアナウンサーに聞いてもらったところ、ちょっと思いがけないところでダメ出しをいただき、目から鱗が落ちました(笑)。

問題になったのは、「清酒 qīng jiŭ」という単語です(笑)。

ええ、あの、日本酒の「清酒(せいしゅ)」のことです。

日本酒のことを中国語でなんというか、というと、そのまま

日本酒
rì běn jiŭ

ということもありますが、

清酒
qīng jiŭ

もしくは分かりやすく

日本清酒
rì běn qīng jiŭ

というほうが多くなっているようです。

で、「清酒 qīng jiŭ」という単語を伊藤が発音したところ、聞いている中国人アナウンサーは「え?今なんて言いました?聞き取れなかった。」と言ってきたのです。

問題点は2つ。

1つは「qīng」の「-ng」が「-n」のように聞こえるとのこと。

ing」と「in」は区別が難しいですね。普段ちょっといい加減にやっていても大丈夫だったのですが、それは相手の語彙力と想像力に頼っていたことをまざまざと思い知らされました(笑)。

人は、相手の言葉を100%完璧に聞きとっているわけではありません。雑音で部分的に聞こえなかったり、相手の発音の癖や方言の影響でちょっと分かりにくかったりすることもあります。しかし、それを人は語彙力や文脈からの想像で補って聞きとっているのです。

しかし「清酒 qīng jiŭ」というような外来語は、聞く相手によって語彙力や想像力でカバーできないこともあるわけです。こういうのは、よほどきっちり発音していなければ、聞き取ってもらえません。そのことを思い知らされました。

何が悪かったかというと、「-ing」は「-in」より口の中が広くなります。それがあまり出来ていなかったようです。一瞬のことなのですが、一瞬だけに取り返しがつかないというか(苦笑)。

それと、もう1つ、「jiŭ」の母音「-iu」の部分。

皆さん覚えておられますでしょうか。中国語の二重母音に「-iu」というのはありません。これは本当は「-iou」という三重母音です。子音が無い場合は「you」と綴り、子音がある場合は「-iu」と書くのでしたよね?

しかし、「-iu」と書いてあっても「o」の音が消えてしまうわけではありません。多少弱くなる気はしますが、日本語で「イウ」というよりは口の中がヒローイのです!

ゆっくり発音すると「イオウ」。ですが、ナチュラルスピードだとどうなるか。多少手を抜いて楽に発音していいわけですが…

我々日本人が手を抜くと、「イウ」としてしまいがちなのですが、中国人はむしろ最後の「ウ」をきちんと言わず「イオ」と言っているように聞こえますね〜。つまり、「酒jiŭ」という字は(あえてカタカナで書くと…笑)「ジウ」ではなく「ジオ」というくらいのほうがいいようです。

以上2点、いずれも口の中が狭いことが原因だったようです。

ご存知の通り、日本語って口をあまり動かさなくても話せます。口の中がいつも結構閉じた状態というか、狭い状態になっているのです。でも中国語はそれではダメで、広い母音は広く発音しなければダメなのですね〜。

分かっているつもりだったのですが、早く滑らかに発音することにばかり注意が向いていて、外してはいけない末端の部分(?)がおろそかになっていました。

まだまだですね。更に精進しようと思います。皆さんもますます頑張ってください!

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

  • 文法から学べる中国語
  • 中国語!聞き取り・書き取りドリル
  • CD付き 文法から学べる中国語ドリル
  • 中国語検定対策4級問題集
  • 中国語検定対策3級問題集
  • ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本

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