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翻訳コラム

COLUMN

第260回擬態語は少ないらしい

2015.10.21
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

台湾に行った時、ドラえもんの漫画本を一冊買ってきました。映画の原作シリーズの第1作『のび太の恐竜』という作品の中国語版です。これは僕が小学校6年生の時の映画なのでもう30年以上も前なのですね〜(苦笑)。懐かしく読みました。

漫画って擬声語や擬態語を絵の中に描きこんでいたりしますよね?例えばイライラしている人の顔の周りに「イライラ」という字を、活字ではなくイラスト風に書いているということが、よくあります。

こういうの、外国で売り出す場合、悩ましいだろうなと思いますね。英語の漫画を日本で売り出すのであれば、そのままでもまぁ大丈夫でしょうが、日本の漫画を中国語圏で売り出す場合、そのままではまず通じません。漢字ならともかく、擬態語や擬声語はふつうカタカナかひらがなで書きますからねぇ。

というわけで、この漫画でも、すべてではありませんが、日本語の擬声語・擬態語を消して中国語で書いてある部分が散見されます。

見ていると、ちょっと面白いことに気づきました。擬声語は中国語でも擬声語で当ててあるのですが、擬態語は具体的な中国語の単語で当ててあるのです。これが結構面白いし、なるほどーと思わせられるので、ちょっと皆さんと一緒に見て行きたいと思います。

ぺこぺこ

のび太君がドラえもんにお願いしているシーン。のび太君が一所懸命頭を下げてお願いしています。このシーン、おそらく日本語版だと「ぺこぺこ」と書いてあったのではないかな〜と思うのですが、ここに書かれている中国語がなかなかスゴイです(笑)。

磕头跪求
kē tóu guì qiú

「磕头」は額を地面にこすりつけるお辞儀のことですよね。「跪求」は跪いてお願いすること。

日本語の「ぺこぺこ」に比べると、中国語の方がずっと生々しいし大袈裟な気がしますけど、意味ははっきりしますね(笑)。

ドキ!

ドラえもんのタイムマシンで主要登場人物が白亜紀の世界に来たのですが、タイムマシンが壊れてしまいました。ドラえもん以外の人はその事実をまだ知りませんが、それがばれそうになった時にドラえもんが「ドキ!」っとしています。もしくは「ギク!」かな?

それを中国語版ではこんなふうにしてありました。

惊吓
jīng xià
驚きおびえさせる

う〜ん。漢字ってやっぱり意味がすごくダイレクトに目に入ってくるので、ちょっと大袈裟に感じてしまいますよね〜(笑)。

チョロ

ドラえもんの足元をネズミらしき動物がよぎりました。日本語だったら多分「チョロ」っと書いてあったのだろうと思いますが、中国語版ではこんなふうに書いてありました。

窜过
cuàn guò

「窜」とは「逃げ回る」ことですから、「窜过」は「逃げて通り過ぎて行く」という感じでしょうか。まぁその通りですが、「チョロ」という言葉で感じられるかわいらしさとか小ささなどは表現しきれていません。日本語の擬態語って意外と一筋縄ではいかないなと、改めて思いました(笑)。

ひらり

ドラえもんの道具に「ひらりマント」というのがあります。自分に向かってくるどんなものでも、たとえ弾丸のようなものでも、このマントを翻せばよけることができるというものです。

これを翻している時、多分日本語だと「ひらり」と書くであろう所で、中国語版はこう書いてありました。

轻飘飘
qīng piāo piāo

これは風に軽く舞っている様子を指す言葉です。

なんか、字画が多すぎて、あんまり軽くヒラヒラしている感じはしないかも(笑)。

クル!

肉食恐竜ティラノザウルスが草食恐竜を襲っている時、ドラえもんたちにふと気づいて首だけをドラえもんたちに向けるシーンがありました。

日本語なら恐らく「クル」とか「クルリ」と書くところですよね。それを中国語版ではこう書いていました。

转头
zhuăn tóu
ふりむく

なるほど、確かに!

こうやって色々と眺めていると、日本語の擬態語って軽く使うものなのに意外とキッチリした意味を持っているのだなーと改めて思いますね。しかも、意味だけでなくニュアンスやものの大きさなども色々と表現できていることが分かります。これを中国語で的確且つ簡潔に表現することは、まず無理でしょう。

つまり、中国語には軽く使える擬態語のようなものが無い(もしくは、あまり無い)ということなのでしょう。日本語から中国語に訳す場合、日本語の擬態語には要注意ですね!日本の漫画の中国語版を読むと、日本語の擬態語の訳例を豊富に目にすることができるので、今後参考にして行こうと思います。

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

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