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翻訳コラム

COLUMN

第262回様態補語の話

2015.11.04
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

ある動作がどのような程度や様子で行われたかを補う「様態補語」、ご存知ですよね?例えばこんなのです。

例文1

他说得非常快。
tā shuō de fēi cháng kuài
彼は話すのが非常に速い。

つまり、こんな語順になりますね。

主語-動詞-「得」-程度や様子を表す言葉

さて、この文の動詞に目的語を加えたい場合はどうすればいいでしょうか。

たとえば上の例文1を「彼は中国語を話すのが非常に速い」というふうに「中国語を」という目的語を加えたい場合、こんなふうに言えばいいですよね。

例文2

他说中文说得非常快。
tā shuō zhōng wén shuō de fēi cháng kuài

つまり、先に「動詞-目的語」を言ってしまってから「動詞-様態補語」を言うのです。

主語-動詞-目的語-動詞-「得」-程度や様子を表す言葉

上記のように言うと、同じ動詞を2回言うことになるので、1回目は省略が可能です。つまり上記例文2の1回目の動詞「说」を省略するとこんなふうになりますね。

例文3

他中文说得非常快。
tā zhōng wén shuō de fēi cháng kuài

さぁ、ここまで説明したら、時々困ってしまう生徒さんがいます。つまり「『他』という主語を言った後、目的語の『中文』を主語のすぐ後に隣り合わせることになってしまうけどいいのですか?」とおっしゃるわけです。

確かにそうですよね。中国語はSVO(主語-動詞-目的語)という語順になる、英語と同じだ、と言われ続けているのに、いとも簡単にそれが覆され、主語の後に目的語が直接くっついてしまうなんてことが起こってしまう。そりゃあその生徒さんが戸惑うのも無理はありません。

実は、中国語の主語や目的語って英語の主語とは定義が全然違うのですね。同じものと考えない方がいいです。英語の主語は、必ず動作主を表しますよね。動作をおこなう人やモノが主語になります。これはかなり厳密に守られているようです。

しかし中国語の場合、話者がその時言いたいテーマ、主題、そういうものが主語として動詞の前に出るのです。

だから、例えばこんな文もあり得ます。

例文4

天气预报看了没有?
tiān qì yù bào kàn le méi yŏu
天気予報は見ましたか?

英語的な発想だと、「天気予報」という「モノ」が「見る」という動作をするわけではないので、この「天气预报」という単語は「看」という動詞の目的語になるはずですよね?実際にそのような文もありますが、例文4のような文も多々出てきます。これは、話者がこの時「天気予報についての話をしたいんだよ」という気持ちが強いわけですね。そうすると、中国語ではそれが主語となって動詞より前に出ちゃうのです。そして英語的発想で言うこの文の主語であるはずの「あなた」もしくは「あなたたち」という言葉はここでは省略されているわけですが、これをもし入れるとすると、こうなります。

例文5

天气预报你看了没有?
tiān qì yù bào nĭ kàn le méi yŏu
天気予報は、あなた見ましたか?

ほら、この例文5、本来目的語として動詞の後ろに収まるはずだった「天气预报」という単語が、テーマになって文頭に出てきた結果、元々の主語である「你」と隣り合ってしまっています。つまり主語が2つあるのですね。そしてこれは先ほどの例文3と同じような現象に見えませんか?

このように、英語で言うと主語になるはずのものと目的語になるはずのものが、動詞の前で並ぶことって、中国語ではよくあることなのですね。

もっと言うと、実は上記例文3は、普通は例文2の1つ目の動詞が省略されていると説明されるのですが、実はそうではなく、例文5と同じように目的語がテーマとなって動詞の前に出てきているだけなのですね。

ちょっと発想の転換をしてみて、中国語ではテーマが動詞の前に出てきちゃう、テーマは2つ以上並ぶこともある、と思って見てみると、今まで変だなと思っていたことが「あ、そういうことか」と納得できることがあると思います。ちょっと見直してみてくださいね。

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

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