翻訳会社インターブックスは品質、スピード、価格で中国語翻訳にお応えします

翻訳コラム

COLUMN

第272回つなぎ言葉

2016.02.03
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

皆さんもご存知の通り、中国語ってあまりつなぎ言葉を使いません。例えば:

王府井是北京最热闹的地方,很多外国人都要去那里买礼物。
wáng fŭ jĭng shì běi jīng zuì rè nao de dì fang, hěn duō wài guó rén dōu yào qù nà li măi lĭ wù.
王府井は北京で最もにぎやかなところで、多くの外国人がおみやげを買いに行きます。

中国語の場合、前半と後半の間に特に何かつなぎ言葉があるわけではありませんが、日本語に訳す場合は何か欲しいところです。上記の訳では「〜で、」と軽くつなぎましたが、場合によっては「…にぎやかなところなので、」とやってもいいでしょうね。

普段は、中国語を日本語に訳す場合は何かつなぎ言葉を補った方がいい場合が多いですよ、と生徒さんに説明しています。このことについては皆さん、違和感は覚えつつも、納得してくださいます(笑)。

しかし、先日ある生徒さんが話してくれた中国語を聞いて、逆のことも考えなければならないのだなと実感しました。その生徒さんの話の内容を一部紹介します。

我今天坐公共汽车来的。花了二十分钟。路上车很多。
(直訳)私は今日バスで来ました。20分かかりました。道は車が多かったです。

生徒さんはなんとかこの3つのフレーズを絞り出し、そこで発言が途絶えました。僕は最後の「路上车很多。」というのを聞いて、まだ話が続くのだろうと思いました。例えば「道路が渋滞して遅刻しそうになりました」というような話が続くのだろうと。でもこの後は待てど暮らせど生徒さんが何も言わないので、「もしかしたら、道が混んでいたから20分もかかったと言いたいのかな?だったら普段はもっと早く到着するのだろうな」と思ったので、「普段はどのくらい時間がかかるのですか?」と質問すると、「普段はバスを使いませんので知りません。」というようなお答えでした。

そう、中国語で話を聞いている場合、一つ一つのフレーズがどういうふうにつながっているかを常に考えながら聞いているので、特につなぎ言葉は要らないのですね。前後のフレーズの関係を強調したい場合はつなぎ言葉を使ってつなげばいいのですが、無くても容易に関係性が推測できる場合はつなぎ言葉を使いません。

ですから逆に、これといって関係性のないフレーズを前後に並べてしまうと、聞いている方はその後の話の展開を期待したり、フレーズとフレーズの間に何か関係があると思ってしまうので、誤解を与えてしまう可能性があるのだと思ったのです。

上記の生徒さんが言うには、自分は単に情景描写的に「路上车很多。」と言っただけで、それが原因になって20分もかかったというふうに言いたかったわけではない、とのことでした。

そう言えば、日本人の話ってあまり論理的ではないですよね(苦笑)。「今日はバスで来ました。20分かかりました。道は混んでいました。……」というような情景描写が続くような文、細切れであまり誉められはしないかもしれませんが、無くはないと思います。

でも中国語で聞いていると、20分かかったのは道が混んでいたせいかなと思い、僕は生徒さんに「『路上车很多。』の前に『因为(なぜなら)』というのを入れるか、もしくは順番をかえて『路上车很多。花了二十分钟。』と言えばつなぎ言葉を使わなくてもいいですよ」と言いたくなってしまったのです。

中国語はつなぎ言葉をあまり使いませんが、その分、文章の組み立ては非常に論理的です。日本語のように、なんとなく思いついたフレーズをポンポンポンと並べるようなことはまずありません。ポンポンポンと並んでいるだけのように見えても、論理的にフレーズが並んでいたり、時系列でフレーズが並んでいたりするので、読んで(聞いて)いると論理関係がすんなり理解できます。

また、論理の飛躍もあまりありません。必要な部分を相手の想像に任せてしまって文には書かない、というようなことは中国語ではあまりありません。

逆に日本語でよくある「同じ意味のことを2度以上繰り返す」ようなことも中国語ではあまりありません。ですから、非常にすっきりした、そして論理関係もはっきりした文章になっています。

我々日本人が中国語を学ぶ時は、論理的な思考も一緒に学んでいく必要があるのかもしれませんね。

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

バックナンバー

記事一覧