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第310回久しぶりに三国志

2016.11.02
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

2016年も終わりが見えてきました。時間のたつのは本当に速いですね。こういう時にいう言葉を一つご紹介しておきましょうか。

光阴似箭
guāng yīn sì jiàn
光陰矢のごとし

「箭 jiàn」とは矢のことです。つまり「光陰は矢に似ている」という意味で、正に日本語で言う「光陰矢のごとし」ですね。

「阴」という字は日本の漢字では「陰」と書きます。コザトヘンの右側に「月」と書くなんて、面白いですね〜。「陽」の簡体字が「阳」と、コザトヘンの右側に「日」と書くので、反対の意味の字である「陰」のほうは「月」にしたのでしょうか。なかなかに楽しい作り方ですね。


さて、今日は久々に三国志関連の成語をご紹介します。ええ、ネタが思いつかないもんで(笑)。

刮骨疗毒
guā gŭ liáo dú

直訳すると、「骨を削って毒を取り除く」という感じですかね。

う〜む。漢字を見ているだけで痛そうですよね(苦笑)。

これは成語というより「歇后语 xiē hòu yŭ」と言った方がいいかもしれませんが、この言い回しの本当の意味は「全无痛苦之色 quán wú tòng kŭ zhī sè (全く苦痛の色が見えない)」というような感じです。

なぜそのような意味になるのでしょうか。実は、三国志のある故事が背景にあるのです。

三国志の主人公的存在は、色々ご意見もおありでしょうが、劉備(刘备 liú bèi)が挙げられるでしょう。その劉備には義兄弟が2人います。一人は暴れん坊として有名な(?)張飛(张飞 zhāng fēi)、もう一人は横浜中華街の関帝廟にもまつられている関羽(关羽 guān yŭ)です。

この成語は、関羽のことを言っているのです。

劉備が蜀(shŭ)(現在の四川省辺りを中心とする地域)に入って初めて本拠地を持った頃の話です。その頃関羽は荊州(荆州 jīng zhōu)という土地を守っていました。

荊州という土地は魏(wèi)とも呉(吴 )とも境を接するかなりきな臭い土地です。ある時魏が荊州を攻めようとしているのを、関羽が受けて立ったのですが、その戦闘の中で関羽は右腕に矢が刺さり、負傷します。

その矢には毒が塗ってあったようで、関羽の体の調子が日に日に悪くなっていきました。

そんな時、有名な華佗(华佗 huà tuó)という医者が関羽の元にやってきます。(華佗の「华」という字は「huà」と読みます。ふつうこの字は「huá」と読みますが、人名や地名では時々「huà」になるのですね。)

この医者は関羽の傷を見ると、矢に塗ってあった毒が骨をむしばんでいるから、悪くなっている部分を削り取らないと、いずれこの腕はダメになる、と言うのです。関羽は特に驚くでもなく「ではやってくれ」と言います。

華佗は、患者が痛さのあまり腕を動かしたり逃げたりしないように、腕をしばりつけようとするのですが関羽が「医者の治療を怖がっていて戦場で命をはって戦えるか。しばらずともよい。」と言うので、華佗はそのまま短刀で患部を切り開き、骨をゴリゴリと削るのです。

にもかかわらず関羽は、顔色一つ変えずに静かに治療を受けていたのでした。

「刮骨疗毒」が「全无痛苦之色」という意味になるのは以上のような話があるからなのですね。

それにしても、う〜ん、痛そう(笑)。周りの人たちのほうが、とても見ていられなかったでしょうねぇ。

ちなみに華佗はその後、曹操(cáo cāo)から持病の頭痛を治すよう命令された時、頭を切り開いて脳腫瘍を切り取ったら治る、というようなことを言いました。華佗はなんと、当時から麻酔を用いて外科手術を行っていたと言われているのです!

しかし疑い深い曹操は、華佗が自分を暗殺しようとしていると思い込んでしまって華佗を殺してしまうのです。

まぁ、今でさえ手術は怖いのに、当時だと、そりゃあ曹操が殺されると思ってしまっても仕方ないかもしれませんね。

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

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