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翻訳コラム

COLUMN

第338回固有名詞をどう訳すか

2017.05.31
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

日本と中国は漢字を使いますから、色々便利ですよね。街の看板を見てもなんとなく意味が分かったりします。

でも同じ言語ではないので、意味はなんとなく分かっても違和感があったり、場合によっては意味が全然違って誤解を生むこともあったりと、気をつけなければならないというのも事実です。

特に、会社や機構や組織の名前を翻訳する時にどうするか、悩ましいものがあります。

例えば「上野動物園」だと、そのまんまで大丈夫ですよね?

上野动物园
shàng yě dòng wù yuán

「上野」は地名なのでそのままにせざるを得ません。「動物園」は中国語でもそのままなので、そのまま簡体字に直して「上野动物园」とすればそれで全く誤解無く中国人にどういう施設なのか伝わります。だからそのままで大丈夫。

日本語のこういう施設名・組織名などで漢字表記のものは、そのままでも大丈夫のものが多いので、基本的にそのままにしていることが多いです。少々中国語として不自然であっても、固有名詞だからということで元の名前を尊重してそのままにするというわけです。逆もまた同じで、中国の施設名・組織名などはできるだけそのまま日本語読みして日本に紹介されることが多いです。

でも、そのままだと誤解を生むこともあります。その場合は適宜翻訳する必要があります。例えば、美容院の名前。「伊藤美容院」という美容院が中国語のホームページを作ったとしましょう。こんなとき、店名をどうしたらいいでしょうか。固有名詞だからということでそのまま

伊藤美容院
yī téng měi róng yuàn

とやってしまっていいでしょうか?

美容院の場合は、ダメでしょうね〜。なぜか分かりますか?

そう、中国語で「美容院 měi róng yuàn」と言えば、日本で言う「美容院」も含まれることがあるかもしれませんが、基本的には「エステティックサロン」のイメージらしいです。「美容院 měi róng yuàn」で画像検索してみると、やはりエステのような画像がたくさんヒットしました。

では、日本で言う「美容院(びよういん)」のような施設は中国語ではどういうでしょうか。僕にはあまり縁のない施設なのでよく分かりませんが(笑)、友達の中国人女性に尋ねてみると、こんな言い方があると教えてくれました。

发廊
fà láng

形象设计中心
xíng xiàng shè jì zhōng xīn

時代は変わるのですね(笑)。僕は、「美容院(びよういん)」と言えば「美发厅 měi fà tīng」だと思っていました。でも「美发厅」はちょっと古いのだと言われてしまいました(笑)。

それはさておき、まず「美容院」という言葉ですが、確かに1つ1つの漢字の意味を見ると中国語の意味(エステティックサロン)方が字義に近いかなと思います。「容」という字には「すがた、かたち」というような意味があります。「容貌」という単語からも分かりますよね。つまり「美容院」は「すがたかたちを美しくするところ」というような意味に取れます。ということは、日本語で言う美容院というよりはエステの方が近い気がしますよね。それに比べて「发廊」ははっきり髪の毛を扱うところだと言うことが分かります。(「发」という簡体字は日本語の「発」だけでなく「髪」という簡体字としても使われます。ただし発音が違います。「発」の場合は「fā」、「髪」の場合は「fà」です。)

「形象设计中心」は直訳すると「イメージデザインセンター」。これはカリスマ美容師がいるような雰囲気のオシャレな美容院のことらしいです。面白いですね〜。日本語だとオシャレなものの名前は外来語(主に英語からの外来語)を使うことが多いのに、中国語では漢字のポテンシャルが高いですね〜(笑)。

さて、このような「美容院」のように比較的はっきり訳し分ける必要がある場合もありますが、微妙なものもあり、悩みが尽きません。先日も「国立感染症研究所」という施設を中国語に訳す時、翻訳者である中国人は「『感染症 gan3 ran3 zheng4』という言い方は中国語ではあまり言わないから」ということでこんなふうに訳してくれました。

日本国立传染病研究所
rì běn guó lì chuán răn bìng yán jiū suŏ

しかしこれをチェックしたある日本人が、「感染症」という言葉は中国語では、少ないながらも使わなくはないので、固有名詞でもあるのでこれはそのままにしてほしい。つまり:

日本国立感染症研究所
rì běn guó lì găn răn zhèng yán jiū suŏ

その日本人の意見も分からなくはありません。固有名詞で、意味も分からなくなったり誤解を受けたりしないのであれば、多少不自然でもそのままにしたいという気持ちもよくわかります。

でもやはりはっきり意味が伝わる方がいいという気持ちもよくわかります。その方が聞いていても自然ですものね。

もし「国立感染症研究所」を英語などの言語に訳すのであれば、そのまま「Kokuritsu Kansensho Kenkyujo」とやるわけはなく、ちゃんと英語に翻訳するのですから、中国語の場合も思い切って訳すべきかもしれないなぁと、個人的には思いました。皆さんはどのように思われますか?

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

  • 文法から学べる中国語
  • 中国語!聞き取り・書き取りドリル
  • CD付き 文法から学べる中国語ドリル
  • 中国語検定対策4級問題集
  • 中国語検定対策3級問題集
  • ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本

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