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翻訳コラム

COLUMN

第196回挨拶や返事

2014.07.16
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

中国語をお教えさせていただいている時、よく生徒さんから「指名されたら返事したいのですが、中国語だとどんなふうに返事すればいいですか?」と尋ねられます。

日本だったら「伊藤君、次の問題やってみなさい」みたいに指名されると、とりあえず「はい」と返事しますよね。そのような時中国語ではどういえばいいか、と質問なさるわけですが、、、答えるのに困ります(笑)。

なぜなら、中国人は普通こういう時何も言わないらしいからです。

出席をとるために名前を呼ばれて、それに答える場合の「はい!」なら、中国語にもあります。

到!
dào

直訳すると「到着しています!」「ここにいます!」というような意味でしょうかね。

漢字の意味が「到る」という意味なので、やはり点呼の際にしか使えないような気がします。授業中に指名される時、先生はその生徒が来ていることはよく分かっているはずなので、いきなり「到!」と答えると「あんたが来てることは、わかってまんがな」と言われてしまいそうです。

なんだか不思議な気がしますよね。日本では、とにかく挨拶を奨励されるではありませんか。小さい頃、お客さんが来たら「挨拶しなさい!」と怒られ(笑)、「うん」って言ったら「はいって言いなさい!」と怒られ、学校では知らない人にも大きな声で挨拶しよう、というふうに教育されます。

でも中国では、実はあまり挨拶をしないようなのです。

ええ、もちろん皆さんお持ちのテキストに「你好!」とか「你早!」とか、色々な挨拶言葉が出てきただろうことは、僕も想像がつきます。

でも、実際には、そういう決まりきった言葉ではなく、もっと実質的な(?)、意味のある言葉のやり取りを、最初から交わしているような印象があります。

たとえば日本なら、出勤した時にすでに同僚や先輩後輩が出勤していたら、とりあえず「おはようございます」「こんにちは」等、一声かけますよね。

中国でも「你好!」と言いながら入ってくる人もいるかもしれませんが、どちらかというと、いきなり話題に入っていく人が多いように感じています。たとえば「しばらく見なかったけどドコカに行っていたの?」というふうに。

挨拶を交わすのは、親しくない証拠なのでしょうね。親しい人同士なら、挨拶なんて必要ない。だって仲間だもん。というところでしょうか。

日本と対象的ですね。日本では「親しき仲にも礼儀あり」という言い回しがあるくらいですから(笑)。

というわけで、人から呼びかけられても、中国では特に声で反応する必要はないらしいことがわかりました。

でも、中国でも挨拶しなければ親から怒られてしまう状況があります。それは、例えば自宅に誰かお客さんが来たのに何も言わずにボ〜っとしている時です(笑)。

日本だったら「おじさんに挨拶しなさい!」とか「こんにちはって言いなさい!」とか言われそうですよね。

これが中国なら、こんなふうに言われるのではないでしょうか。

快叫叔叔!
kuài jiào shū shu

直訳すると「早くオジサンって呼びなさい!」というような感じでしょうか。

そう、つまり、相手に呼びかけることが挨拶になる、、、みたいですね。。。(不思議)

親に「快叫叔叔!」と言われた子供は「叔叔!」とだけ叫びます。日本ではちょっと考えにくい状況ですね。日本だと「おじさん!」と呼びかけたら「なんだい?」って言われてしまいそう(笑)。

挨拶って語学でも最初のほうに習うものですが、文化に最も深くかかわっていることを考えると、実は一番習得が難しいのかもしれません。

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

  • 文法から学べる中国語
  • 中国語!聞き取り・書き取りドリル
  • CD付き 文法から学べる中国語ドリル
  • 中国語検定対策4級問題集
  • 中国語検定対策3級問題集
  • ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本