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翻訳コラム

COLUMN

第252回有気音のコツ

2015.08.19
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

中国語の発音って、やっぱり難しいですよね〜。難しい要素は色々あるのですが、その内の1つに「有気音/無気音」の違いというのがありますね。

日本語は「清音/濁音」というのがあります。ご存知のとおり「か/が」「し/じ」のようなものがそうです。(すべての音が清音と濁音のどちらかに分かれるかというと、そうではありません。例えばア行、ナ行、マ行、ヤ行、ラ行、ワ行の音は、清音や濁音という枠には入りません。)

英語も日本語と同じように清音(無声音)と濁音(有声音)という枠があります。

しかし、中国語にはそれがありません。その代わり、「有気音(息が強く出る音)」と「無気音(息がほとんど出ない音)」というのがあるのですね。ちょっと整理しておきましょうか。

有気音 p t k q c ch
無気音 b d g j z zh
(その他 m f n l h x s sh r)

日本語では清音にも濁音にも入らない音がありましたね。中国語でも、有気音にも無気音にも入らないものがあります。それを「その他」として挙げておきました。

さて、日本語ってあんまり息を出さなくても話せる言語ですよね。みんな結構静かに話している印象があるのは、そのせいかもしれません。

ですから、多くの日本人は、ふつうに子音を発音すると、大体中国語の「無気音」的になるようです。ですから、有気音のつもりで「他 ta1 (かれ)」と発音しても、多くの人の発音は無気音に聞こえます。

なんとか有気音に聞こえるようにしようと思って「もっと息の音をさせてください!」と言っても、多くの人は声が大きくなるばかりのような印象です。

どうすればいいのでしょうか。。。

以前、NHKのテレビ中国語講座で、音声の波形を見る機械で中国語の有気音がどうなっているか、日本人の発音と中国人の発音を比べるという実験をやっていました。

すると、中国人の発音では、最初にまず「t」の音を発したあと、少し「ハー」という息の音がします。その時、声帯は鳴っていません。そしてその後声帯が鳴って「アー」という母音部分の音が聞こえて来るようになっていました。波形を見ると非常にそれがよく分かりました。

ところが日本人の場合、「ハー」という息の音がほとんどないのです。「t」の音を発した後、すぐに「アー」と母音部分が鳴りだすのですね。

つまり、有気音は、この「ハー」という息の音(声帯は鳴っていない状態で息だけ)が必要なのです。

これが日本人には難しいようです。それは、平仮名や片仮名という日本の文字のせいもあるかもしれません。

たとえば「た」という字ですが、これはローマ字で書くと「ta」ですよね。つまり、「t」という子音と「a」という母音から構成されている音だと言うことが、ローマ字で書くとよく分かるのですが、日本語の仮名で書くとそれが分かりません。

どうも日本人は「た」は「た」という1つの音であり、子音と母音に分けることができるとは思えない人が多いように思えます。でもこの二つを分けて考えることができれば、有気音はつかめるかもしれません。

僕はよくこんな練習をしてもらいます。つまり、「声を出さないで、ヒソヒソ話をしてみてください。」と言うのです。

ヒソヒソ話のつもりで「たー」と言ってもらいます。これが出来ない人は、あんまりいないと思います。「出来ない」という女性が以前いましたけど(笑)、本当に出来ないはずはないですよねー。ヒソヒソ話をしたことのない人なんて、いないですよね?(笑)

で、声を出さないで息だけで「たー」と言った後、声を出して「あー」と言ってみるのです。

それが出来るようになったら、息だけで言う「たー」の部分を短くしていきます。そんなに短くしなくても大丈夫。それより、息だけの「たー」の後、スムーズに声をだして「あー」が言えるかどうか、そっちのほうが重要です。

どうでしょうか。ちょっとそんなふうにして練習してみてください。

日本人にとって、実は無気音より有気音のほうが苦手だと思います。きれいに中国語が話せるようになるよう、お互い頑張りましょうね!

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

  • 文法から学べる中国語
  • 中国語!聞き取り・書き取りドリル
  • CD付き 文法から学べる中国語ドリル
  • 中国語検定対策4級問題集
  • 中国語検定対策3級問題集
  • ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本