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翻訳コラム

COLUMN

第348回声の高低

2017.08.09
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

少し前のことですが、テレビを見るともなしに見ていると平愛梨さんの妹の平祐奈さんが紹介されていました。とっても明るくてかわいらしいお嬢さんなのですが、なんと趣味はダジャレを考えることなのだそうです(笑)。

そして、彼女の考えたダジャレがいくつか紹介されていたのですが、その中の1つをここで紹介します。これです:

ジャムおじさんは、ピクニックに、ジャムを持参。

このことをテレビで言っていた時、僕は何かに気を取られていたところだったので、すぐにはどこがダジャレになっているのか分かりませんでした。で、まぁいいやと思ってスルーしかけたところで、ふと気が付きました(笑)。

ジャムおじさん
ジャムをじさん(持参)

なるほど!(笑)

これはなかなかいいダジャレですね。素晴らしい。

でも僕は最初ダジャレになっていることに全く気付かなかったのですよね〜。それは、イントネーションが全然違ってしまっていたからだろうと思いました。

「ジャムおじさん」のイントネーションはこんなですよね?

ジャムおじさん
低高高低低低

それに対して「ジャムをじさん(持参)」は?

ジャムをじさん
高低低低高高

両者を上下に並べてみると:

低高高低低低(ジャムおじさん)
高低低低高高(ジャムを持参)

見事に正反対ですね!共通なのは「じ」のところの「低」だけ(笑)。

これだけイントネーションが違うと、やっぱり全く違って聞こえますねぇ。面白いです。日本語はこうやって、高低の区別で意味を聞きわけているのですね!

日本語を話す人は、これほどまでに声の高低に敏感なわけです。それなのに、中国語を発音する時はどうして声の高低をあまり気にしないのでしょう(笑)。もっと気にしてください(笑)。

もし外国人が日本語で「ジャムを持参してください」というつもりで「ジャムおじさんしてください」と言ったら、真に受けた日本人はジャムおじさんのモノマネをしてしまいますよね(笑)。同じようなことが中国語にだって言えます。だからこそ、日本語のイントネーションと同じくらいに中国語の声調も重視すべきです。

前にも書いたことがありますが、次の文を見てください。

水饺一碗多少钱?
shuĭ jiăo yì wăn duō shao qián
水餃子はお椀一杯いくらですか?

これをもしこんなふうに言ってしまったら?

睡觉一晚多少钱?
shuì jiào yì wăn duō shao qián
一晩寝るのはいくらですか?

子音や母音は全て同じですが、冒頭2文字の声調のみが違っています。たったそれだけで文全体の意味も変わってしまうのです。

レストランのウエイトレスさんに後者の発音で言ってしまったら、それこそセクハラものです(笑)。

中国人から感謝されて「谢谢 xiè xie」と言われた時に「不谢 bú xiè」と言うつもりが「bù xié」と言ってしまったらどうなりますか?

布鞋
bù xié

そう、中国の北方などでよく見られる布製の靴のことと取られて怪訝な顔をされてしまうこと請け合いです(笑)。

日本語のイントネーションを間違うと誤解を生むということを思えば、中国語の声調の大切さも実感できますよね?皆さんももっともっと声調にこだわって中国語を勉強してくださいね!

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

  • 文法から学べる中国語
  • 中国語!聞き取り・書き取りドリル
  • CD付き 文法から学べる中国語ドリル
  • 中国語検定対策4級問題集
  • 中国語検定対策3級問題集
  • ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本