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翻訳コラム

COLUMN

第377回受け身

2018.03.28
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

先日、卓球の福原愛さんの中国語の話を書きましたが、彼女の言葉の中で受け身の表現が使われていましたね。

とりあえず原文をここでもう一度引用しますね。

奥运村的厕所早上坏了,正要找人修,结果晚上被我不小心修好啦。我是不是很厉害。
Àoyùncūn de cèsuŏ zăoshang huài le,
zhèng yào zhăo rén xiū,
jiéguŏ wănshang bèi wŏ bù xiăoxīn xiūhăo la.
Wŏ shì bu shì hěn lìhai.


日本語に訳すとこんな感じでしょうか:
「選手村のトイレ、朝壊れてたの。誰かに直してもらおうと思ってたんだけど、結局夜、私がうっかり直しちゃった。私ってすごくない?」

この文のミソは“不小心"だと思います。僕はこれを「うっかり」と訳しています。僕は最初この文を見た時、「うっかり」したのは「トイレさん(笑)」だと思いました。つまり、トイレが「ふふん、故障してやったぞ。直せるものなら直してみな。」と思っていたのに、うっかりしている内に直されてしまったよ、という意味かなと思いこんでしまったのです。

でもこの「うっかり」はトイレではなく福原選手の方ですね。

つまり、「故障したトイレをいじっていたら、あらま、うっかり直しちゃった」という感じですね。

本来修理は専門の業者がやるべきなのに、専門家でない私(福原選手)がうっかりなおしちゃったよ、といった感じでしょうか。

これは文法的にもはっきりしています。“被我不小心修好啦"は受け身の言い方を使っています。受け身は次のような語順で表されます。

主語(A)+‘被'+(動作を行う)人(B)+動詞(C)

これで「AはBにCされる」という意味になります。

つまり、実際にはBさんがCという動作をすることになりますね。

福原選手の書いた文を上記に当てはめてみると

A・・・省略されていますが「トイレ」
B・・・“我"つまり福原選手
C・・・“不小心修好"

BさんがCという動作をするのですから、“我(福原選手)"が“不小心修好"をしたことになります。つまり“不小心"は、トイレではなく福原選手の動作にかかっているのですね。

もしトイレさんが「うっかり」したのであれば“不小心"は“被"の前に置かれるはずですものね。中国語は、修飾語を被修飾語の前に置きますから。

中国語の受け身の文は、“被"の後ろだけでも文として成立するので、誰が何をしたのか混乱したら、“被"の後ろだけを文として読んでみると分かりやすいかもしれません。

中国語はあまり受け身の文を好みませんので、お目にかかる機会は少ないかもしれませんが、見つけたらよく観察して自分のものにしていきたいですね〜。

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

  • 文法から学べる中国語
  • 中国語!聞き取り・書き取りドリル
  • CD付き 文法から学べる中国語ドリル
  • 中国語検定対策4級問題集
  • 中国語検定対策3級問題集
  • ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本

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