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翻訳コラム

COLUMN

第382回鼻母音

2018.05.02
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

中国語の発音には鼻母音というものがありますね。ピンインで書くと「-n」や「-ng」で終わっている音節です。例えば:

yīn ←→ yīng
shān ←→ shàng
chén ←→ chéng
wēn ←→ wēng
qián ←→ qiáng

でも多くの日本人の耳には「-n」も「-ng」も単に「ン」と言っているようにしか聞こえないと思います。だから多くの人が、自分で発音する時も適当に「ン」と言っているように思います。相当上手な人やプロのような人でも、きっちり区別できている人は少ないような気がします。伊藤も相当頑張って区別するようにしているつもりですが、やはり時々混乱したりおろそかになってしまいます。

でも中国人の耳はごまかせません!おろそかにしていることがしっかりばれていますよ!(笑)

ただ、問題は、きちんと鼻母音の区別ができていなくても、なんとなく通じてしまうことです。もし通じないのであればどうにかして矯正しなければいけませんが、とりあえず通じてしまうのでだれも真剣に直そうとしませんし、中国人の方もそこまで細かく指摘してくれません。でもやっぱり直せるものなら直したいですよね。

日本人がどのように「-n」や「-ng」を発音しているのか反省してみますと、どうやら問題は「-ng」の方が大きい気がします。

例えば、“上 shàng"という字、多くの日本人の口を見ているとみんな「-ng」の時に唇を閉じかけていると思います。完全には閉じなくても、かなり狭くなっているのでは?

自分では、舌先を上の歯の裏に着けたりせず、喉の奥の方で「ン」と言っているつもりでも、口の中や唇の開き加減が狭ければ、「-ng」には聞こえないと思います。

例えば“上 shàng"という字を発音するとしましょう。まず「sha」を発音した時、口をしっかり大きく開けますよね?その後、そのままの口の中の広さと唇の大きさを保ったまま「-ng」の音をしっかり響かせなければなりません。これをしないと、「shàn」との区別ができません。

“英 yīng"も同じです。「yi」を発音した時は、口の中がどうしても狭くなります。これは「i」という母音の性質上仕方のないことです。しかし、その後「ng」を発音する時には、舌の位置を下にさげ、口の中の空洞を広くしなければなりません。それをしないと「yīn」と区別がつきません。

伊藤はNHK国際放送局の中国語放送でアナウンサーやディレクターをやっていますが、アナウンサーたちの中に“林音 Lín Yīn"という人と、“尚鹰 Shàng Yīng"という人がいます。いずれも女性です。是非この2人が自分の名前を言うのを聞いていただきたいと思います。「-n」と「-ng」の違いがすごくよく分かると思います。

特に日本人には「-ng」の研究をしてもらいたいので、“尚鹰 Shàng Yīng"さんの出ている番組を探して聞いてみてください。NHK国際放送局の中国語放送のホームページアドレスは以下の通りです。

https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/zh/

中国語の発音って本当に難しいですよねぇ。でもできるようになるとますます楽しくなります。ドンドン上手くなって、中国人をびっくりさせてやりましょう〜!(笑)

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

  • 文法から学べる中国語
  • 中国語!聞き取り・書き取りドリル
  • CD付き 文法から学べる中国語ドリル
  • 中国語検定対策4級問題集
  • 中国語検定対策3級問題集
  • ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本