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翻訳コラム

COLUMN

第388回またまた三国志

2018.06.13
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

伊藤が中国語の勉強を始めたのは、大学に入学した1987年でした。もう30年過ぎてしまったんですね〜(苦笑)。

ややもすると初心を忘れそうな今日この頃なので、時々は初心に戻って謙虚に中国語を勉強し直さなければな〜と思っております。日常のアレコレに取り紛れてしまってなかなか難しいですけどね〜。

さて今日はいいネタが思いつきませんので(苦笑)、またまた三国志ネタとさせてください。

今日ご紹介したい言葉も、“歇后语 xiēhòuyŭ"です。“歇后语"ってご存知ない方も多いでしょうから、まずは軽く復習しましょう。

“歇后语"というのは、“后(後ろの部分)"を“歇(休んだ)"“语(言葉)"。つまり、謎かけに似ています。まず謎をかけて、「その心は?」の部分は敢えて言わないで想像させる。そういう言葉遊びですね。僕のお気に入りの“歇后语"を例として1つ挙げておきますね。

孔夫子搬家
Kŏng fūzĭ bānjiā
直訳:孔子様の引越し

そのこころは?

尽是书(尽是输)
Jìn shì shū
直訳:すべて本ばかり(すべて負けばかり)

つまり“书 shū(書籍)"と“输 shū(負ける)"とが同じ発音なので、それを利用したしゃれ言葉です。孔子様が引越しするならきっと荷物は本ばかりなんだろうな〜ということから、「すべて本」つまり「すべて負け」。ゲームなどで負けてばかりいる時に冗談で言う言葉です。

なかなか面白いでしょう?

さて、今日皆さんにご紹介したいのは、こんな言葉です。

周瑜谋荆州
Zhōu Yú móu Jīngzhōu
周瑜が荊州を謀る

その心は?

赔了夫人又折兵
Péile fūrén yòu zhé bīng
夫人を持って行かれた上に、兵も失った

この言葉には、以下のような三国志の話が背景にあります。

三国志といえば、ハイライトは赤壁の戦ですね。曹操と孫権・劉備連合軍との戦いです。孫権は劉備が滞在していた荊州という土地を昔から欲しく思っており、赤壁の戦で曹操に勝った時に当然荊州は孫権の土地になるものと思っていたら、劉備が上手く立ち回って荊州に居座ってしまいました。

これに腹を立てた孫権は、家来の周瑜になんとか荊州を取れ!と命を下します。周瑜はあの手この手でなんとか劉備たちを攻めようとし、ある時一計を案じました。それは、、、

孫権の妹を劉備と結婚させ、結婚式のために劉備を自分たちの土地(呉)に呼び寄せ、そこで殺してしまおう!というものでした。

劉備軍の軍師である諸葛孔明は、それが謀略と知っていながらその手に乗ることを進言し、劉備は呉に乗りこみます。そして、周瑜の数々の罠を全て切り抜け、最終的に夫人(孫権の妹)を連れて呉を脱出することに成功します。

周瑜は劉備と夫人が脱出したことを知り、手勢を連れて追いかけますが、途中で劉備軍に討たれ、追い払われてしまうのです。

そこで劉備軍たちに言われます。

「周瑜の素晴らしい計を見ろ。夫人は取られ、兵は討たれ。」

劉備軍は大笑いし、周瑜は詳しさのあまり倒れてしまうのでした(笑)。

この“歇后语"は、泣き面に蜂、というような意味や、欲を出して色々考えて却って損をするといったことを言いたい時に使います。“歇后语"の謎ときの部分(“赔了夫人又折兵")だけでもよく使いますので、覚えておくといいかもしれませんね。

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

  • 文法から学べる中国語
  • 中国語!聞き取り・書き取りドリル
  • CD付き 文法から学べる中国語ドリル
  • 中国語検定対策4級問題集
  • 中国語検定対策3級問題集
  • ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本