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翻訳コラム

COLUMN

第401回再び“给”

2018.09.19
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

1年ほど前でしたか、前置詞の“给 gěi”について書きましたが、今日は再び“给”の話をしようと思います。

先日、本メルマガの読者の方から“给”に関するご質問をいただきました。

ちょっと以下の2つの例文をご覧ください。

例文1

给我写信。
gěi wŏ xiě xìn
私に手紙を書いてください。

例文2

给我看看。
gěi wŏ kàn kan
私に見せてください。

文の構造は、見たところそっくりですね。“给+人+動詞”という構造になっています。

でも日本語を見ながら考えてみますと、実際に“写 xiě(書く)”や“看 kàn(見る)”という動作をする人は、例文1と例文2とで違いますね。

例文1の“写 xiě(書く)”をする人は聞き手(あなた)です。それに対して例文2の“看 kàn(見る)”をする人は“我 (私)”です。

そう、例文2はあたかも使役(~させる)の文のようになっているのです。これは不思議。“给+人+動詞”という構造ですが、「話者が(人)に(~する)」という場合と、「話者が(人)に(~させる)」という場合があるわけです。何か使い分けがあるのでしょうか。

中国人に尋ねてみたところ、例文2タイプの意味になるのは、多くは“给我~(私に~)”となっている場合だそうです。

そして動詞は知覚系のもの(見る、聞く、触る、味わう、など)が多いようです。教えてくれた中国人が挙げてくれた例をいくつか書き出しておきますね。

例文3

给我听听。
gěi wŏ tīng ting
私に聞かせて。

例文4

给我摸一下。
gěi wŏ mō yí xià
私に触らせて。

例文5

给我尝尝看。
gěi wŏ cháng chang kàn
私にちょっと味見させて。

こういう場合の“给gěi”は、意味的には使役なので、“让 ràng”に置き換えられます。でも“让 ràng”に置き換えられる“给 gěi”は、どちらかというと少数派のようですね。上記条件に当てはまらない場合は、“给 gěi”は使いにくいようです。ふつうは“给 gěi”は「~に」という意味ですものね。

つまり、前置詞“给 gěi”には用法が3種類ほどあるということになるでしょうか。

1「~に」
例:我给他写信了。 wŏ gěi tā xiě xìn le
私は彼に手紙を書いた。

2「~のために」
例:给我滚出去! gěi wŏ gŭn chū qu
(私のために)出ていけ!(頼むから出て行ってくれ!)

3「(私に)~させて」
例:给我看一下。 gěi wŏ kàn yí xià
ちょっと私に見せて。

いずれも文脈を追えていれば問題なく読み取れる(聞き取れる)でしょうが、慣れない内は戸惑いますよね。でもいずれもよく出てくる言い方なので、慣れるようにしたいものです。

今回取り上げた第3タイプの“给gěi”の文については、まだ数人の中国人に尋ねただけで、今回書いたことが最終的な結論ではありません。今後も色々考えながらこの現象を見て行き、何か分かればまたここに書きますね。皆さんも何か気づいたことなどがあれば僕に教えてください!

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

  • 文法から学べる中国語
  • 中国語!聞き取り・書き取りドリル
  • CD付き 文法から学べる中国語ドリル
  • 中国語検定対策4級問題集
  • 中国語検定対策3級問題集
  • ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本