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翻訳コラム

COLUMN

第417回#私のお気に入り 中国語の主語

2019.02.13
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

ハッシュタグ「私のお気に入り」の第2弾です(笑)。

皆さんは中国語を学び始める前に、多分ほとんどの人は英語を学んでいたことでしょう。

英語だと、主語というのがとても重要で、まず省略することができませんね。省略してしまったら命令文になってしまいますもんね。日常会話ではどうなのか知りませんが。

それと、英語では主語は必ず動作主を表しますね。例えばこんな中国語の文があったとしましょう:

桔子吃了。
Júzi chīle.
ミカンは食った。

中国語も日本語も、割と平気でこんなことをやってのけちゃいます(笑)。日本語文法ではどう教えているか分かりませんが、中国語では、この文の主語は“桔子(ミカン)”です。

つまり、英語では主語は必ず動作を行う者(この文だと、省略されていますが、恐らく「私」)でなければなりませんが、中国語のこの文の主語“桔子”と動詞“吃”との関係は、全然違いますね。“桔子”は“吃”という動作の対象です。英語文法的に言うと「目的語」になるべきモノですよね。

でも中国語では「目的語となるべきモノ」も平気で動詞の前に立ち、文法的には「主語」と呼ばれてしまう。面白いですよね~。中国語文法では、主語は動作主とは限りません。その文の主題、テーマ、なのです!

まず普通の文を見てみましょう。

我吃桔子了。
Wŏ chī júzi le.
私はミカンを食った。

この文は、英語文法の観点から見てもあまり問題の無い、普通に「主語―動詞―目的語」と並んだ、ごく一般的な文です。では、中国語文法というフィルターを通してこの文を解釈してみましょう。

中国語文法の主語は「動作主」というよりは「テーマ」です。すると、この文の場合“我”が主語になっているので、この文のテーマ、主題、一番言いたいこと、は“我”だということです。「私の話なんだけどね、ミカンを食ったんだよ」というような感じです。

それに対して“桔子吃了。”はどうでしょうか。

そう、この文の主語は“桔子(ミカン)”ですから、ミカンがテーマなのです。「ミカンの話なんだけどね、(あれ)食っちゃったんだ」というような感じでしょうか。

さて、ではこの文、誰がミカンを食っちゃったんでしょうか。

そうですね。そこは省略されちゃっています。でも言いたい時もありますよね。つまり「ミカンの話なんだけどね、俺が食っちゃったんだ。」って感じにしたい時。

こんな時はこう言います。

桔子我吃了。
Júzi wŏ chīle.
ミカンは私が食べた。

そう、話のテーマって1つとは限りませんよね。大きなテーマがドーンとあり、その中に小さなテーマがある、そういう多重構造になっているのが人間のおしゃべりです。中国語ではテーマを大きなものから並べて行きます。

上の文だと、この人の現在最も気になっているのは「ミカン」の話です。そしてそれについては「私」が関与しています。つまり「ミカン」>「私」という関係になっているので、上記のように“桔子”を先に言い、その後小さなテーマとして“我”を言うのです。

では、例えば昨晩の食卓に色々な果物が並んでいたってな話をしていたとしましょう。「色々あったね~。」「うん、色々食ったよ」「ミカンとかメロンとか食った?」「僕、ミカンは食ったよ・・・」というような会話があるかもしれません。

この最後の「僕、ミカンは食ったよ。」という文、中国語だと:

我桔子吃了。
Wŏ júzi chīle.

と言えそうです。

つまり、この時の話題は、君は何食った?僕はあれ食った、という時の話なので、まずは「君」ではなく「僕」の話だとはっきりさせます。その次に何を食ったかが話題になっているので「ミカン」が来ます。つまり「僕については、ミカンなら食った(でもマンゴーは食わなかった)」というニュアンスになるわけです。

英語の文法を中高6年間学び、それに慣れていた僕からすると、中国語のこういった文法がものすごく「自由」なものに感じ、「中国語ってサイコー」と思ったものでした(笑)。皆さんはどう思われますか?

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

  • 文法から学べる中国語
  • 中国語!聞き取り・書き取りドリル
  • CD付き 文法から学べる中国語ドリル
  • 中国語検定対策4級問題集
  • 中国語検定対策3級問題集
  • ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本

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