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翻訳コラム

COLUMN

第421回#私のお気に入り 声調

2019.03.13
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

僕が大学で中国語を専攻しようと思ったのは、高校3年生の時に吉川英治の『三国志』を読んではまってしまったからでした。それ以前は中国のことに全く興味を持ったことがなく、何にも知らない真っ白な状態で大学に入学し中国語を始めました。

そんな僕が中国語を嫌にならずにすぐのめり込めたのは、何といってもあの「声調(四声)」に魅せられたからです。

最初は戸惑いました。こんながんじがらめで自由に会話できるのだろうか、と思ったり、漢字の発音を覚えるのに声調まで覚えなければならないなんてタイヘン!と思ったり(笑)。

でもすぐに夢中になりました。きっかけは、多分、漢詩の朗読を聞いたことだったかなと思います。

僕たちの使っていたテキストには、発音の説明が終わったところ辺りに漢詩がいくつか載っていて、付属のテープ(当時はまだCDじゃなかった…苦笑)に朗読が収録されていたのです。あの時僕を開眼させた漢詩は、これでした。

静夜思李白
jìng yè sīLĭ Bái

床前明月光
chuáng qián míng yuè guāng

疑是地上霜
yí shì dì shàng shuāng

举头望明月
jŭ tóu wàng míng yuè

低头思故乡
dī tóu sī gù xiāng

何度も聞き、自分でも朗読している内に、声の動きがまるでジェットコースターに乗っているように楽しく感じてきました。

そしていくつか気に入った漢詩を朗読し暗唱してみました。

テープに収録されている朗読を聞くと、単に機械的に読むのではなく、結構感情の起伏があることも分かってきました。特に、4行詩(絶句)の場合だと3行目の最後の3文字がとてもとても盛り上がるのですね。そして4行目では静かに自省的に、そしてゆっくりと終わる感じです。この起伏にも魅了されました。

なんだ、声調がついていても、全然がんじがらめにならないじゃん!と思ったのです。

それから、僕が中国語を始めたころに日本でも上映された中国映画の話題作がありました。《芙蓉镇》(Fúróngzhèn)という映画で、文化大革命を正面から取り扱った映画でした。まだ当時伊藤はよく聞き取れませんでしたが、大声で威勢よくしゃべっている中国語のカッコよさや、囁くようなつぶやくような静かな中国語の美しさに魅了されました。

この映画の中で「豚になっても生き抜け」と言う台詞があるのですが、この中国語は今でもよく覚えています。

活下去,像牲口一样地活下去!
Huó xiaqu, xiàng shēngkou yíyàng de huó xiaqu !
(直訳)生き続けろ、家畜のように生き続けるんだぞ!

“像牲口一样”の中の“像~一样”は、実際にはかなり軽く弱く発音します。実体的な意味を持たないからですね。それに比べて“牲口”の部分は、「家畜」というしっかりした意味がありますので、ここはとても強く、特に“牲”は第1声なので高らかに発音します。

こういうメリハリがつけられるようになると、俄然中国語学習は楽しくなりますね。中国語の発音研究は、今でも僕の趣味の一つです。

皆さんは発音研究を楽しんでおられますか?

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

  • 文法から学べる中国語
  • 中国語!聞き取り・書き取りドリル
  • CD付き 文法から学べる中国語ドリル
  • 中国語検定対策4級問題集
  • 中国語検定対策3級問題集
  • ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本

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