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翻訳コラム

COLUMN

第425回紛らわしい字

2019.04.10
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

先日読者の方からメッセージをいただきました。南紀白浜アドベンチャーワールドで生まれ育ったパンダ「海浜」「陽浜」「優浜」の3頭が2017年6月初旬に中国に返還されたそうですが、中国側では「海浜」のことを「Hăibāng」と呼び、当の「海浜」は自分のことだと分からなかったらしい、ということを教えていただきました。

日本で生まれても中国に返さないといけないのはまぁ仕方ないとして、この「浜」という字をどうして「bāng」と読むかなぁと、ちょっと残念に思いますね~。

まぁこれはある程度仕方のないことではあります。というのは、日本の「浜」は繁体字で書くと「濱」ですよね?これは簡体字だと“滨”です。この形ならみんな「bīn」と読むのですが、、、

実は中国には“浜”という字体の別の漢字があるのです。そしてこの漢字は「bāng」と読むのです!意味は「小川」のような意味らしいですね。

だから、中国人が「海浜」という漢字を見たら、当然ながら「hăi bāng」と読むのです。だってそう書いてあるんですから仕方ないですよね。むしろ、「濱」という字を「浜」と略して書くことにした日本人に非があります(笑)。

ネットでこの「海浜」たちの記事を検索して見てみると、“海滨”と書いている記事もあれば、日本の漢字を見てそのまま“海浜”と書いている記事もありました。混乱しているようです。でも、日本では「浜」と書けば普通「濱」の字のことなので、中国語では“滨”と表記すべきですし「bīn」と読むべきだと思うのですが、形が「浜」なので話がややこしくなっているのですね~。

同じような状況なのが「芸」という字です。

日本の漢字体で「芸」と書くと、これは繁体字では「藝」ですね。『文藝春秋』の「藝」です。簡体字では“艺”ですね。

ですから、日本の漢字体の「芸」は中国語では「yì」と読むべきです。

でも、実は中国にはもともと“芸”という形の漢字が存在します。発音は「yún」です。意味は「油菜、菜種」のような意味だそうです。

だから、日本の人名や地名に「芸」の字が入っている場合は要注意です。中国人はまず間違いなく「yún」と読んでしまうでしょう。これも、日本で「藝」という字を勝手に(?)「芸」と略してしまったために起こった弊害ですね。

上記2例は日本の漢字体が引き起こした混乱ですが、これから書く例はちょっと特殊です。まだ僕の中でも解明できていません(苦笑)。

皆さんは中国の大同という都市に行ったことがありますか?僕は行ったことがないのですが、いつか行ってみたいのです。というのは、「雲崗の石窟寺院」があるからです。

この「雲崗(云岗)」の「崗(岗)」という漢字の発音は「găng」です。この字はみんな「găng」と読むのですが、「岡(冈)」という字もよく「găng」と読まれてしまいます。でも辞書を見ると「岡(冈)」は「gāng」です。“冈”という字が中国語ではあまり使われない字だからなのでしょうか。なぜか多くの人が「găng」と読んでしまうようです。僕の学生時代の友人で「中岡」という人がいますが、彼女は中国人の先生からよく「Zhōnggăng」と呼ばれていて「ちがうのにー」とつぶやいていましたっけ(笑)。

そのせいなのかどうなのか、“云岗”はよく“云冈”と書かれています。

しかしどちらの漢字が使われていても、発音は必ず「Yúngăng」なのです。世界遺産なので動画を検索すると色々出てくるので見てみると、まず間違いなく発音は「Yúngăng」ですね。でも漢字表記は“云岗”と“云冈”の両方が見られます。“云冈”が多少多いですかね。知り合いが去年だったか大同に行っていてSNSに写真をアップしてくれていたのですが、現地の看板のようなものにも“云冈”と書かれていました。

違う字なのに!発音だって違うのに!(笑)

どちらが正しいのですかね~。また両方の表記が見られるのはなぜなのでしょうか。そして“云冈”と書かれていても「Yúngăng」と読むのはなぜなのでしょうか。謎です(笑)。

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

  • 文法から学べる中国語
  • 中国語!聞き取り・書き取りドリル
  • CD付き 文法から学べる中国語ドリル
  • 中国語検定対策4級問題集
  • 中国語検定対策3級問題集
  • ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本

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