翻訳コラム

COLUMN

第453回完了の“了”の位置

2019.10.30
通訳・翻訳家 伊藤祥雄

今日はまたまた「完了を表す“了”」の話をしたいと思います。

この“了”を動詞の直後に置くのか、はたまた目的語の後ろに置くのか、いつも悩ましく思っています。色々な先生が色々な観点から説明をしてくれていますが、正直よく分かりません。

一般的には、目的語に数量詞など修飾語がない場合は:
主語+動詞+目的語+“了”

目的語に数量詞など修飾語がある場合は:
主語+動詞+“了”+修飾語+目的語

というふうに説明されることが多いです。しかし、例外が結構あるのですね。つまり、後者(目的語に数量詞などがついている場合)に“了”が目的語の後ろに行くことはあまりないように思われますが、前者のように目的語に数量詞などがついていない場合でも“了”が動詞の直後に入ることは、結構あるのです。

僕も以前このブログで“了”の話題を扱ったことがありました。

その時僕は、“了”の位置は目的語に重きがあるかどうかで決まる、というようなことを書きました。つまり:

我买票了。
Wŏ măi piào le.
私はチケットを買った。


これは、何のチケットをどのくらい買ったか、という具体的は話はなく、単に「チケットを買った」という事実を坦々と語っているのみです。

それに対して:

我买了三张电影票。
Wŏ măi le sān zhāng diànyĭng piào.
私は映画のチケットを3枚買った。

こうなると、目的語“票”の前に“三张(3枚)”とか“电影(映画)”という修飾語がついていますので、目的語が具体化し、必然的に重きが置かれるのですね。

目的語に修飾語がなくて重きが置かれていない場合、あたかも「動詞+目的語」の2語(上の例で言うなら“买+票”)が1つの動詞のように扱われるのではないかと。だから“了”は“买+票”の後ろに置かれるのではないかと、、、まぁそんなことを書きました。

それが間違っていたとは特に思っていないのですが、先日某老師がちょっと違う説明をしていて、とても分かりやすいと思ったので、皆さんにもご紹介します。

その老師は次のように説明されていました。

まず漠然と、例えば「昨日何を買ったの?」と尋ねられたら、まずは漠然と「チケット買った」と答えますよね?そんな時は前者(主語+動詞+目的語+“了”)です、と。つまり:

我买票了。

そしてその答えを聞いた相手が「え?何のチケット?何枚くらい買ったの?」と尋ねたら(つまりもっと詳しい質問が来たら)、後者(主語+動詞+“了”+目的語)の語順をとります、と。つまり:

我买了三张电影票。

目的語に修飾語がつくかどうかは、実は問題ではないようです。むしろ、目的語が具体化しているかどうか、なのでしょうね。

例えば:

A:暑假你去哪儿了? Shŭjià nĭ qù năr le ?
夏休みあなたはどこに行きましたか?

B:我去北京了。Wŏ qù Běijīng le.
私は北京に行きました。

ここで「北京に行った」というのは、とりあえず「どこに行ったか」という問いに対して大雑把な答えをしているのです。この後で「北京のどこにいった?」「万里の長城に行ったよ」と、話が具体化していくのであれば

A:你去了北京的什么地方? Nĭ qù le Běijīng de shénme dìfang ?
あなたは北京のどんなところに行きましたか?

B:我去了长城。Wŏ qù le Chángchéng.
私は万里の長城に行きました。

と、“了”の位置が動詞の直後に移動するのです。

もし「夏休みに何をした?」との問いであれば、最初の返答はもっと漠然と「旅行に行った」とのみ答えそうですよね?それに対して「どこに行ったの?」と突っ込むと、相手はきっとこう言うでしょう。

我去了北京、上海和西安。
Wŏ qù le Běijīng Shànghăi hé Xī’ān.
私は北京と上海と西安に行きました。

このような説明なら、目的語に修飾語がついていないのに“了”が動詞の直後にある場合でも例外にはならないからいいな、と思いました。

皆さんはどう思われますか?

伊藤祥雄

1968年生まれ 兵庫県出身
大阪外国語大学 外国語学部 中国語学科卒業、在学中に北京師範大学中文系留学、大阪大学大学院 文学研究科 博士前期課程修了
サイマルアカデミー中国語通訳者養成コース修了

通訳・翻訳業を行うかたわら、中国語講師、NHK国際放送局の中国語放送の番組作成、ナレーションを担当

著書

  • 文法から学べる中国語
  • 中国語!聞き取り・書き取りドリル
  • CD付き 文法から学べる中国語ドリル
  • 中国語検定対策4級問題集
  • 中国語検定対策3級問題集
  • ぜったい通じるカンタンフレーズで中国語がスラスラ話せる本