第45回IT特許翻訳講座 第2回
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
IT特許翻訳講座2回目です。
特開2003-114852号の要約を訳します。
まず、この文章を訳しましょう。
「ネットワーク接続される送信者のパソコン16、受信者のパソコン22、状態サーバ28を備えた電子メールシステム10であって」
“An electronic mail system 10 comprising a personal computer 16 of a transmitter, a receiver's personal computer 22, and a state server 28connected to a network"
図を見てわかるように、送信者のパソコン、受信者のパソコン、状態サーバはネットワークに接続されています。
したがって「ネットワーク接続される」は、送信者のパソコン、受信者のパソコン、状態サーバのすべてにかかるように訳す必要があります。
「ネットワーク接続されるパソコン」は、ネットワークに接続されるパソコンということです。
“a PC connected to a network"
“a network-connected PC"
のように表現します。
“a network connected transmitter's PC, a network-connected receiver's PC, a network-connected state server"
このようにすべてに"a network-connected"を全てに付さなければなりません。したがって、
“a transmitter's PC, a receiver's PC and a state server that are connected to a network"とすれば、
“that are connected to a network"が"are"となっているため、複数のものにかかることがわかります。
「送信者」はsender, transmitter
「受信者」はreceiver
「送信手段」もtransmitter、「受信手段」もreceiverといいます。
特許明細書では、「送信者」と「送信手段」は同じ対象を意味することがあります。受信者と受信手段も同様です。
つまり何かを送信するもの、受信するものは人であっても物であってもよいのです。
もちろん「送信手段」を"transmitting means"、「受信手段」を"receiving means"ということもあります。
一つの明細書に「送信者」と「送信手段」が出てきた場合には、訳し分けるために"transmitter", “transmitting means"と訳します。
“transmitting means"は単数か、複数かという問題もあります。
“means"は複数形と考えて複数扱いにして、冠詞として"a"を付さないことがあります。
しかし「手段」を意味するので単数扱いとして、"a transmitting means"と訳すこともあります。いずれの形もよく見かけます。
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
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