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翻訳コラム

COLUMN

第47回IT特許翻訳講座 第4回

2016.02.18
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子

IT特許翻訳講座第4回目です。特開2004-151783号「電子メール制御プログラム」((株)アクティス)の一文です。

「図2は、このシステム10の機能構成を示すブロック図であり、送信側パソコン12は、メール制御部30aと、メール生成部32aと、制御条件設定部34aと、表示画面生成部36aと、メール送信部38aと、メール受信部40aと、メールデータベース42aとを備えている。」

翻訳

“Fig. 2 is a block diagram showing the functional configuration of this system 10, and a transmission side PC 12 comprises an email control unit 30a, an email generation unit 32a, a control condition setting unit 34a, a display screen generation unit 36a, an email transmitter 38a, an email receiver 40a and an email database 42a"

まず図2を見てみましょう。

「図2はブロック図である」
“Fig. 2 is a block diagram".
「機能構成を示すブロック図である」
“a block diagram showing the functional configuration"
「図が〜を示す」という場合の「示す」の訳語の候補は、
“show"
“illustrate"
“represent"
があります。
“show"には「図示する」の意味があるので、これは適訳です。
“illustrate"は本当の意味は、「図面やグラフを使って説明する」「例を挙げて説明する」であり、「示す」の訳語として適切かどうか疑問があります。
"illustrate"の訳語は「記述する」ですが、
“a block diagram illustrates the functional configuration"
(ブロック図は、機能構成を図を使って説明している)
という意味であり、この局面で"illustrate"を使うことは誤りではありません。
しかし「示す」という訳語として即、"illustrate"が適訳とはいえません。

“represent"は、「描写する」「表す」「再現する」「代表する」などの意味があります。「描写する」は図を使って説明することなので、ここでも
" a block diagram represents the functional configuration"
のように"represent"を使っても誤りではありません。
しかし「図示する」では"show"が最もよく使われます。
「図示されていない」は"not shown"という表現を使うことからみても、"show"が適任です。

「送信側PC」は何というか?
送信者側のPCであり、"a PC on a transmission side"というのが正しいでしょう。しかしここはもっと簡潔に、
“a transmission side PC"といってみます。
「〜の側に」は"on the side of …", “on the … side"ということを覚えておきましょう。
「そちらサイドで」「当社サイドで」のように、日本語で「〜サイドで」という表現で出てくることもあります。こういうときは、「サイド」というヒントを与えてくれているので、"on your side", “on our side"と英訳すればよいです。
しかしあえて「サイド」を訳す必要がないときがあります。
「そちらサイドでこの案件を処理してください」
“Please handle this case".
“We kindly ask you to handle this case".
ここでは「そちらサイド」は、貴方また貴社を指しています。"please"を使えば、あえて"you", “your company"という必要がありません。
あるいは、"we kindly ask you to …", “we authorize you to …"とすればよいです。

「そちらサイドで」を強調する場合は、
“please handle this case on your side"
と訳します。

奥田百子

東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)

著書

  • もう知らないではすまされない著作権
  • ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
  • 特許翻訳のテクニック
  • なるほど図解著作権法のしくみ
  • 国際特許出願マニュアル
  • なるほど図解商標法のしくみ
  • なるほど図解特許法のしくみ
  • こんなにおもしろい弁理士の仕事
  • だれでも弁理士になれる本
  • 改正・米国特許法のポイント