第71回「明細書」「記載する」の訳
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
今日は初歩的な疑問です。特許「明細書」の英訳はdescription とspecificationがあります。このどちらを使えばよいでしょうか。
翻訳ではこの2種類の訳語に遭遇します。米国特許法(35USC)112条ではspecificationを使っています。「日本法令外国語訳データベースシステム」(法務省)では、「明細書」はdescription, 発明の詳細な説明は"detailed explanation of the invention"という訳語が使われています(http://www.japaneselawtranslation.go.jp/law/detail/?ft=1&re=01&dn=1&x=0&y=0&co=01&ia=03&ky=%E7%89%B9%E8%A8%B1%E6%B3%95&page=26)。
「明細書」の訳語をdescriptionにすると、「明細書の記載」はどう訳したらよいでしょうか。"statement in the description"とすればよいし、明細書自体が記載であるから、あえて「記載」を訳さずにdescriptionと訳せばよいです。
もうひとつ、「クレームに記載の」の場合の「記載」はreciteをよく使います。英英辞典“Dictionary.com"で“recite"を調べると、“to give an account of", つまり「説明する」の意味があることがわかります(http://www.dictionary.com/browse/recite)。この意味でreciteは「クレーム記載の」の訳語として使われるのでしょう。
This is an elementary question, How can we translate the Japanese word for patent “specification" (“meisaisho" in Japanese) into English? Would it be “description" or “specification" ?
We encounter these two words as translations of “meisaisho". The U.S. Patent Law(35 USC), Article 112 uses the word “specification" as a suitable translation. However, the “Japanese Law Translation Database System"(Ministry of Justice, Japan)uses the word “description" as a translation of “meisaisho" and uses the phrase “detailed explanation of the invention" as a translation of “hatsumei no shosaina setsumei (document explaining the invention in detail)" in Japanese(http://www.japaneselawtranslation.go.jp/law/detail/?ft=1&re=01&dn=1&x=0&y=0&co=01&ia=03&ky=%E7%89%B9%E8%A8%B1%E6%B3%95&page=26).
How can we translate “statement in the description (meisiaisho)" if we translate “meisaisho" as “description"? In this case we may use the phrase “statement in the description", otherwise we do not have to translate “meisaisho" and we can use a single word “description" because it originally means statement.
Additionally, we often use the phrase “recited in claims". Upon looking it up in the English-English dictionary “Dictionary.com", “recite" means “to give an account of" (http://www.dictionary.com/browse/recite). This definition for the word “recite" is used in this phrase “recited in claims".
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
- こんなにおもしろい弁理士の仕事
- だれでも弁理士になれる本
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