第117回著作権の基本 ミッキーマウスをプールの底に描いた事件、早慶戦のマスコットに使用した事件
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
前回のブログでサザエさん事件の話をしました。他人の創作したキャラクターを無断でコピーしてはいけないという話ですが、これに関連してよく知られているが信じがたい本当の事件です。
1987 年の話ですが、滋賀県の小学校で児童たちが卒業制作にプールの底にミッキーマウスの絵を描いたら、ディズニー社の要求でそれが撤去させられたという事件です。
子供の絵だから、学校の授業の一環だからよいと普通は考えるでしょう。著作権法35条には、学校で教育を担任する者、授業を受ける者は、授業の過程で使用する目的がある場合は、公表された著作物の複製ができることが規定されています。
卒業制作は特に小学校の場合は授業の過程ともいえますが、プールの底に描いた絵は不特定多数の人々の目に触れるし、子供たちの卒業後も学校の施設の一部として残るものです。純粋にその時点で授業の過程で必要だったからコピーしたとはいえないでしょう。学校の校舎にミッキーマウスの絵を描くようなものです。
学校でミッキーマウスの使用が問題になった事件をもう一つ。早慶戦で慶応大学がミッキーマウスをマスコットとして使用していた件です。これも1982年から使用されなくなりました。早慶戦は子供たちを教育する場ではありません。これは完全に使用すべきではありません。
In my previous blog, I told you about the Sazae-san case which demonstrated how copying a character created by another person without their permission is prohibited. Today, I will tell you another well-known and unbelievable yet true story.
In 1987, graduating students in an elementary school in Shiga Prefecture illustrated Mickey Mouse on the bottom of their swimming pool, which was removed as per Disney's request.
It is ordinarily considered that children's illustrations of Mickey Mouse may be permitted because they're being used for school lessons. Article 35 of the Copyright Law states that persons in charge of education or persons who take lessons at schools may copy published copyrighted works for the purpose of use in school lessons.
Although projects completed in commemoration of graduation (especially in elementary schools) may fall under the category of school lessons, illustrations on the bottom of a swimming pool can be seen by the general public, and would be left even after the children's graduation as part of the school's facilities. Illustrating a Mickey Mouse on the swimming pool floor was not determined to have been necessary for education through school lessons, and was deemed similar to the act of illustrating a copyrighted character on a school building.
There is another case in which using Mickey Mouse at school caused a problem. Keio University had used Mickey Mouse as their mascot for the Waseda-Keio rivalry match, but has ceased to use him since 1982. As the Waseda-Keio rivalry match is not an occasion to educate students through lessons, using Mickey Mouse was therefore prohibited.
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
- こんなにおもしろい弁理士の仕事
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