第133回幼児用椅子が著作物と認められた画期的な判決
弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
今日は幼児用椅子が著作物と認められた画期的な判決を紹介します。「TRIPP TRAP」事件です。
知財高裁は、この椅子(以下の写真)は、
- 左右一対の部材Aの2本脚であること、
- 部材Aに形成された溝に部材G(座面)及び部材F(足置き台)がはめ込まれている点
- 部材Aは部材Bの前方の斜めに切断された端面と接合している点
- 部材Aは直接床面に接している点
- 部材Aは部材Bが約66度の角度を形成している点
に著作物性が認められる、と判断しています。
著作物として認められた博多人形は大量生産されるといっても、美的鑑賞の対象となる製品ですが、(昭和47年(ヨ)53号、長崎地裁)、この幼児用椅子は真の意味での実用品であり、これが著作物と認められたことは画期的です。
しかしこれは侵害事件であり、侵害といわれた側の椅子は4本脚であり、基本的構成が異なるということで結果的には著作権侵害とは判断されませんでした(平成26(ネ)10063、)知財高裁)。
最高裁判所「裁判例情報」(平成26(ネ)10063、知財高裁)よりダウンロード(www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/044/085044_hanrei.pdf)
Today, I will introduce an epoch-making court decision, called the "Tripp Trapp" case, in which an infant chair was approved as a copyrighted work.
The Intellectual Property High Court approved this chair (see the following photograph) as a copyrighted work in terms of:
- component A, comprising a symmetrical pair of legs;
- component G (a seat) and component F (a foot rest), which are fitted in the grooves formed on component A;
- component A, which is bonded only to an obliquely cut front end surface of component B;
- component A, which directly contacts the floor; and
- component A and component B, which together form an angle of about 66 degrees.
The Hakata Dolls which were approved as a copyrighted work (Showa 47(yo) No. 53 by Nagasaki District Court) are products whose beauty can be appreciated, despite being mass-produced. Meanwhile, this infant chair is genuinely a utility product, so it is epoch-making that this chair was approved as a copyrighted work.
This case was an infringement lawsuit; however, the chairs of the side alleging infringement had four legs and basically different configurations, and as a result the case was not determined to be copyright infringement (Heisei 26(ne) No. 10063 by Intellectual Property High Court).
Downloaded from "Supreme Court of Japan" website ("Judgements of the Supreme Court", Heisei 26 (ne) No. 10063 by Intellectual Property High Court)
(www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/044/085044_hanrei.pdf)
奥田百子
東京都生まれ、翻訳家、執筆家、弁理士、株式会社インターブックス顧問
大学卒業の翌年、弁理士登録
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)
著書
- もう知らないではすまされない著作権
- ゼロからできるアメリカ特許取得の実務と英語
- 特許翻訳のテクニック
- なるほど図解著作権法のしくみ
- 国際特許出願マニュアル
- なるほど図解商標法のしくみ
- なるほど図解特許法のしくみ
- こんなにおもしろい弁理士の仕事
- だれでも弁理士になれる本
- 改正・米国特許法のポイント
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