NEW
2025.11.05更新
翻訳外注ノウハウ

【プロが解説!】翻訳会社の未来

【正確な翻訳とは?】品質管理戦略が求められる理由

翻訳業界は今、技術革新の潮流にさらされています。当社が掲げる「世界85言語対応・2,500名超のプロ翻訳者体制」、その前途には「翻訳」が「グローバルコミュニケーション」へと変貌し、企業・団体・社会が求める翻訳サービスの地平が拡がっています。

近年の自動翻訳やAI翻訳(ニューラル機械翻訳:NMT)の急速な進化も、翻訳会社を取り巻く環境を大きく変えつつありますが、「翻訳者不要論」も囁かれるなか私たちは翻訳会社として確信しています。「自動翻訳、AI翻訳だけでは、正確なコミュニケーションは担保されない」ということを。

翻訳会社の未来は、「人手翻訳が役割を変えながらも、不可欠な存在として残り続ける」ことにあります。自動翻訳・AI翻訳と「どう共存するか」、その仕組みと価値をいまこそ整理すべきです。

翻訳会社が直面する変化、求められる役割、人手翻訳の強み、未来のモデル、そして依頼者が抑えるべきポイントを5+αの観点で解説します。

 

翻訳会社を取り巻く環境の変化

ChatGPTは翻訳業界をどう変える?可能性と限界、今後の翻訳のあり方とは

翻訳業務の形態は、ここ十年で大きく変化しています。その変化を理解することが、未来を見据える第一歩です。

技術革新:機械翻訳・AI翻訳の進化

ニューラル機械翻訳(NMT)をはじめ、生成AIや大規模言語モデル(LLM)を活用した翻訳支援ツールが、翻訳業務における「コスト・時間・言語カバー」のハードルを一気に下げています。特に大量ドキュメント、多言語展開、速度優先のタスクでは機械翻訳が現実的な選択肢になっています。

グローバル化・多言語化の加速

企業の海外展開、インバウンド対応、デジタルコンテンツの多言語化、SDGs/ESG報告の国際発信、といった潮流により翻訳ニーズが量的にも質的にも高まっています。この拡大に伴い、迅速かつ信頼性の高い翻訳サービスが求められるようになりました。

クライアントニーズの高度化

翻訳対象が、単なる言語変換から「ブランドメッセージ」「文化適応」「統一性」「法令遵守」などを含む“グローバル発信文書”へと変化しています。

統合報告書・IR資料・統計レポート・マニュアル・マーケティング資料などが主な例ですが、翻訳会社にはこれらの高度化ニーズに応える体制が求められています。つまり、翻訳会社の未来には、単純な言語処理から脱却する“付加価値”が不可欠です。

人手翻訳の強みと、なぜ今も必要なのか

【「伝わる」を超えて「響かせる」】ビジネス成功を支える人間翻訳の真価

自動翻訳がこれほど進化しても、人手翻訳は廃れてはいないどころかむしろその価値が見直されています。その理由を多角的に掘り下げます。

文脈・ニュアンス・ブランドトーンの理解

自動翻訳は言語ペアのパターン学習に強みを持ちますが、文脈やブランドトーン、細やかな語感を汲むには限界があります。一方、人手翻訳者は読み手・部署・目的・文化を意識しつつ、言葉選びや文体選定、語感の微調整を行うことができます。

専門領域・業界知識への対応力

金融法務特許医療・技術翻訳など、専門性の高い分野では、訳語の正確性・用語統一・形式遵守などが非人手翻訳、つまり自動翻訳やAI翻訳では安定しないケースがあります。このような“知識・リサーチ・校正”のプロセスこそ、人手翻訳が優位を維持する要因です。

品質保証・セキュリティ体制

翻訳会社には高度で厳重な「翻訳の品質管理」「チェック体制」「機密管理」が必須です。しかし自動翻訳やAI翻訳ではこうした品質・機密性・統一性を包括的に担保するのは難しいため、人手翻訳の存在価値が継続します。

多言語展開・ローカライズの総合力

ひとつの言語だけでなく、多言語で統一された表現を求められる場面(パンフレット、Webサイト、マニュアル等)では、「翻訳+DTP・編集・品質チェック・ブランドトーン統一」が求められます。このような「総合的な多言語ソリューション」が、人手翻訳会社の未来を支えています。

自動翻訳とのハイブリッド共存モデル

完全な自動化ではなく、AI翻訳+人手翻訳(ポストエディット)というハイブリッドモデルが現実的です。翻訳会社の未来とは、「人 vs 機械」といった対立構造ではなく、「人+機械または、機械+人の協働」によって、スピードと精度を両立することにあります。

翻訳会社の未来形モデル:変化するが消えない「人手翻訳」

【2025年版|翻訳業界で注目すべき最新トレンド5選】進化する言語サービスの現在地

未来を見据えたとき、翻訳会社が成長・存続していくためのモデルを以下の観点で整理します。

モデルA:翻訳+自動化(機械翻訳)統合ワークフロー

翻訳会社は、機械翻訳エンジンを活用し、翻訳メモリ(TM)や用語集を効率的に運用しつつ、人手校正・ネイティブチェックを組み込んだ「機械+人」のワークフローを構築します。このモデルでは、コストを抑えながら大量文書・高頻度更新の案件に対応できます。

モデルB:プレミアム翻訳・ブランド翻訳・高付加価値型

ブランドマニュアル、マーケティング資料、統合報告書、IR資料など、読者に対して「響く」翻訳が求められる文書は、人手翻訳が中心となるモデルです。翻訳だけでなく、文化適応・文脈調整・表現設計まで行う「クリエイティブ翻訳」が価値になります。

モデルC:多言語展開・ローカライズ・多メディア統合型

Webサイト翻訳、パンフレット翻訳、DTP組版、音声・映像字幕、多言語校正などを、ワンストップで扱う統合サービスです。このモデルでは、「人手翻訳チーム+DTPオペレーター+校正チーム+プロジェクトマネジメント機能」が不可欠です。

モデルD:データ・AI活用翻訳支援型

翻訳リソースをデータ化(用語集、翻訳メモリ、品質指標)、AIを「支援ツール」として活用し、翻訳作業の前処理・後処理・校正の効率化を図るモデルです。

翻訳会社は「翻訳品質マネジメント企業」へと進化します。特許出願や論文にも「人と機械の協働」がその効率を示す研究がありますが、翻訳会社はこのようなモデルに適応できる体制やノウハウを早期に構築するべきです。

モデルE:教育・人材育成・専門領域特化型

翻訳会社は人材育成を強化し、翻訳者・校正者・ローカライズ専門家という「人的資産」を磨き続ける必要があります。当社の品質管理課ブログでも、「翻訳はリレー」という視点を提示しています。

翻訳会社が取り組むべき未来戦略5+α

チェックポイント

翻訳会社がこれからも価値を発揮し続けるためには、以下の戦略的観点が重要です。

戦略1:プロセスの標準化と効率化

機械翻訳・翻訳メモリ・用語集・ポストエディットなどの技術・ツールを活用し、翻訳プロジェクトの工程を標準化・効率化します。これにより、スピード・コスト・品質のトレードオフを改善できます。

政府報告書によると、機械翻訳を活用した翻訳工程の「前処理」「後処理」「品質評価」が、翻訳業務全体の生産性に大きく影響することが示されています。

翻訳会社は、ISO17100取得、チェック体制の強化、専門翻訳者の育成、ネイティブ校正チームの運用など、品質保証機能を強める必要があります。

戦略3:人材育成と専門領域への焦点

AI翻訳時代だからこそ、「人が関わらないと成立しない領域」で活躍できる人材の育成が価値を上げます。翻訳者・校正者・対訳者・ローカライズ専門家を育て、専門分野(IR、法務、医療、技術など)に特化した組織体制を整えましょう。

戦略4:顧客価値の再定義とサービス拡張

単純な「翻訳(文書)の提供」から、「翻訳+DTP+校正+多言語展開+グローバル発信支援」というように、サービス範囲を拡張することが重要です。顧客に対して「翻訳を通じて何を実現するか」を提案できる企業が選ばれます。

戦略5:技術との協働・オープンイノベーション

AI翻訳・機械翻訳は「敵」ではなく「味方」です。翻訳会社はこれら技術をいち早く取り込み、自社ワークフローに組み込み、人手翻訳を支援する体制を整えるべきです。まさに「人+機械の協働(Human‑Machine Collaboration)」が鍵であるという研究もあります。

また、翻訳メモリ・用語集・ブランド語彙をデータベース化し、価値化することも重要です.

戦略6(補足):グローバル品質・文化適応力の確立

言語翻訳だけでなく、文化適応(ローカライズ)、ターゲット市場の理解、ブランド価値をグローバルに維持する力が翻訳会社の差別化要因になりますが、これこそはまさに人手翻訳が担うべき領域です。

当社インターブックスの未来ビジョンと実践

生成AIを翻訳チェックに活かす

当社は「操業30年以上・世界85言語対応・2,500名以上のプロ翻訳者」という体制を有していますが、以下に当社が実践する“未来に向けた取り組み”を簡単に整理します。

  • 翻訳+多言語編集/DTP:翻訳だけではなく、ワンストップで多言語展開を支援
  • 品質管理・セキュリティ体制:ISO17100・ISMS(情報セキュリティマネジメント)取得による信頼性
  • ハイブリッド翻訳モデルの提示:AI翻訳・機械翻訳を活用しつつ、人手翻訳・校正を重視する運用設計
  • 専門分野・多領域対応実績:IR・財務、技術マニュアル、出版・書籍、観光・インバウンドなど幅広い領域
  • 教育・人材育成の継続:翻訳現場の意識と専門性向上を継続しています

これらの取り組みは、翻訳会社が未来でも選ばれ続けるための基盤と言えます。

まとめ:未来を見据えた翻訳会社のあり方

IT翻訳とは?対応分野・料金相場・依頼のコツ

翻訳会社の未来は、「人手翻訳がいらなくなる」という悲観的なものではありません。形態は変化しつつも、人手翻訳が果たす役割は今もこれからも不可欠です。以下に整理します。

  1. プロセスの変化:自動翻訳・AI翻訳の進化に伴い、翻訳ワークフローは「人+機械の協働」へと進化します
  2. 高付加価値用途への集中:ブランド翻訳、統合報告書、IR資料など、専門性・信頼性・表現力が求められる文書では人手翻訳が中心になります
  3. 多言語展開・ワンストップサービスの需要:翻訳会社は、「翻訳+DTP+校正+多言語展開を包括的に提供できる体制」を持つべきです
  4. 品質保証・専門性・人材育成:ISO認証、校正体制、専門翻訳チーム、人材育成・ナレッジ蓄積が競争力の鍵です
  5. 技術導入とデータ活用:AI翻訳・翻訳メモリ・用語集などの技術を導入し、効率化と品質向上を目指します
  6. 顧客価値の再定義:単なる言語変換を超えて、「グローバルコミュニケーション」「ブランド価値発信」を支援する翻訳会社へと進化します

株式会社インターブックスは、これらの視点を実践しながら、翻訳会社として未来に向けた価値提供を続けています。翻訳会社選び・翻訳サービス導入を検討されているなら、ぜひこれらの観点を基準にご検討いただければと思います。

今後も、人手翻訳とAI翻訳が共に活躍する時代において、「言葉の力を通じて世界をつなぐ」存在として、私たちは翻訳会社の未来を切り拓き続けます。どうぞ、お気軽にご相談ください。


「MTPE(機械翻訳ポストエディット)作業のポイント」について、詳しく知りたい方はこちらをご覧ください

「自動翻訳・AI翻訳の正しい使い方」について、詳しく知りたい方はこちらをご覧ください

 


翻訳会社インターブックス

外国語対応でお困りですか? どうぞお気軽にお問い合わせください。

無料ご相談・お問い合わせフォーム

関連記事