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2025.09.03
翻訳外注ノウハウ

【プロが解説!】「IR英文開示の義務化について」施行時期と対応のポイントや翻訳会社の選び方

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2025年4月1日から、東京証券取引所プライム市場に上場する企業に対し、IR情報(決算情報や適時開示情報など)の英文開示が義務化されました。これは日本の資本市場の国際競争力を高め、海外からの投資をさらに呼び込むための重要な変更です。

IRの英文開示義務化について

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今回の制度変更は、海外投資家が日本企業の情報にアクセスしやすくすることで、対日投資を活性化し、日本市場の国際的な競争力を高めることを目的としています。

英文開示義務化制度の概要

目的: 海外投資家が日本企業の情報へアクセスしやすくすることで、対話を促進し、企業価値向上を促す

対象企業:東証プライム市場に上場する全ての企業

開始時期: 2025年4月1日以降に開示される情報から適用

開示タイミング: 日本語での開示と同時が原則

対象書類:投資判断に特に重要とされる以下の情報が義務化の対象となる

  • 決算情報:決算短信、四半期決算短信、およびそれらの補足説明資料
  • 適時開示情報:業績予想の修正やM&Aなど、TDnetを通じて開示される全ての情報

特に重要なのが「同時開示」という点です。これにより、国内外の投資家間の情報格差をなくすことが求められます。ただし、企業の負担を考慮し、当面は概要やサマリーのみの英訳も許容されるなど、いくつかの柔軟な措置も設けられています。

重要なポイント

1)「同時開示」が原則

日本語での開示と同時に英文開示を行うことが原則となります。これにより、国内外の投資家間の情報格差をなくすことが狙いです。ただし、やむを得ない事情で日本語開示が遅延する可能性がある場合は、日本語を優先し、その後速やかに英文開示を行うことも認められています。

2)全文翻訳でなくても可

企業の負担を考慮し、必ずしも全ての書類を全文翻訳する必要はなく、概要や一部(サマリーなど)の英訳による開示も当面は認められます。どこまで開示するかは、各企業の判断に委ねられます。

3)英文は「参考訳」という位置づけ

開示される英文は、あくまで日本語の正式な開示の「参考訳」と位置づけられています。そのため、翻訳の正確性が直ちに規則違反の措置対象となることはありません。ただし、英文開示を全く行わない場合は、公表措置などの対象となる可能性があります。

4)1年間の猶予措置あり

体制整備に時間が必要な企業のために、1年間の適用猶予措置が設けられています。2025年3月14日までに所定の書面を東証に提出すれば、2026年3月末まで義務化の適用が猶予されます。

企業が取るべき対策

ビジネス翻訳とは?対応分野・料金相場・依頼のコツ

この英文開示の義務化は、日本の企業がグローバルな投資家と直接コミュニケーションを取るための重要な基盤となります。対象企業にとっては負担増となる側面もありますが、適切に対応することで、新たな資金調達の機会や企業評価の向上に繋がる可能性があります。そしてこの変更に対応するため、対象企業は以下のような準備を進める必要があります。

翻訳体制の構築

専門知識を持つ人材の確保や育成、または信頼できる外部の翻訳会社との連携が不可欠です。AI翻訳ツールの活用も有効な選択肢となります。

開示プロセスの見直し

日本語と英語の同時開示を実現するため、決算や適時開示のスケジュール、社内承認フローの見直しが求められます。

質の高い情報発信

単なる直訳ではなく、海外の投資家が日本の会計基準やビジネス慣行を理解できるよう、分かりやすく質の高い英文で情報を提供することが、企業価値の向上につながります。

英文開示義務化への対応:IR翻訳会社の活用

【翻訳外注フロー構築ガイド】翻訳を"ときどき"外注する人向け

この義務化に対応する上で、多くの企業が直面するのが「翻訳をどうするか」という問題です。社内リソースだけで、専門性とスピードが求められるIR翻訳に対応するのは容易ではありません。そこで、IR翻訳のプロフェッショナルである翻訳会社を活用するメリットが注目されています。

翻訳会社を活用する3つのメリット

1)圧倒的な専門性と品質

IR文書には、会計や金融に関する専門用語が頻出します。優れた翻訳会社には、これらの分野に精通した翻訳者が在籍しており、単なる直訳ではない、海外投資家に正確に意図が伝わる高品質な翻訳を実現します。

2)「同時開示」を可能にするスピードと体制

決算発表などはまさに時間との勝負です。実績豊富な翻訳会社は、タイトなスケジュールに対応するための効率的な作業フローとチーム体制を構築しています。これにより、企業は安心して日本語の資料作成に集中できます。

3)コア業務への集中とコスト削減

IR担当者が翻訳作業に時間を取られてしまうと、本来注力すべきIR戦略の立案や投資家との対話といったコア業務がおろそかになりかねません。翻訳をアウトソースすることで、担当者は本来の業務に集中でき、結果として全体の生産性向上とコスト削減に繋がります。

失敗しない!IR翻訳に対応できる翻訳会社の選び方

チェックポイント

では、数ある翻訳会社の中から、自社に最適なパートナーをどう見つければよいのでしょうか。以下の5つのポイントで選びましょう。

翻訳会社選びの5つのチェックポイント

①IR・金融分野での翻訳実績は豊富か

最も重要なポイントです。企業のウェブサイトで、決算短信やアニュアルレポート、統合報告書などの翻訳実績が公開されているかを確認しましょう。具体的な企業名を公開していなくても、どのような文書に対応してきたかが分かると安心です。

②専門性の高い翻訳者が在籍しているか?

「ネイティブ翻訳者がいる」だけでは不十分です。金融機関出身者や会計知識を持つ翻訳者など、専門分野のバックグラウンドを持つ人材がいるかどうかが、翻訳の質を大きく左右します。

③セキュリティ体制は万全か?

開示前のIR情報は、株価に影響を与える可能性のある重要な機密情報です。ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証の取得や、秘密保持契約(NDA)について明確なポリシーを持っている会社を選びましょう。

④柔軟な対応力とコミュニケーション

タイトな納期や急な修正依頼はつきものです。そうした際に、担当のコーディネーターが迅速かつ丁寧に対応してくれるかは非常に重要です。問い合わせへのレスポンスの速さなども判断材料になります。

⑤翻訳支援ツール(CAT)やAI翻訳への対応

用語の統一や過去の翻訳資産の活用に有効な翻訳支援ツールや、コストとスピードを両立する「AI翻訳+人の手によるチェック(ポストエディット)」など、最新技術を適切に活用しているかも確認しましょう。これにより、品質を維持しつつコストを抑えることが可能になります。

まとめ:IR英文開示は、企業価値向上のチャンス

世界の言語・公用語一覧

 
2025年4月から始まるIR英文開示の義務化は、プライム市場上場企業にとって避けては通れない課題です。しかし、これは単なるコスト増の要因ではありません。質の高い英文情報をタイムリーに発信することは、海外の投資家やアナリストからの評価を高め、新たな資金調達や企業価値の向上に繋がる絶好の機会です。
 
信頼できる翻訳会社をパートナーに選び、この変革の波を乗りこなすことが、グローバル市場での成功の鍵となるでしょう。まずは、複数の翻訳会社に相談し、自社のIR戦略に最もフィットするパートナーを見つけることから始めてみてはいかがでしょうか。

 


「IR・決算・アニュアルレポート・統合報告書翻訳」について、詳しく知りたい方はこちらをご覧ください

「【グローバル戦略の鍵を握る「翻訳投資」】持続的成長を支える言語の力」について、詳しく知りたい方はこちらをご覧ください


 

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