翻訳コラム

COLUMN

第3回特許権取得における日米比較の例(実務上の問題その2)

弁理士・知的財産翻訳検定試験委員 藤岡隆浩
シリーズ「特許法の国際比較」

日本では、共通する新規な特徴に基づいて、権利範囲の相違する特許権を取得することができません。したがって、特許取得後において、競業者がぎりぎりのところで回避した場合には、権利取得の観点からはお手上げです。
しかし、米国特許制度では、継続出願制度があるので、このような問題に対処することができます。継続出願制度は、特許権の取得後において、再度出願を継続状態にして、新たな特許権の取得を可能とするための制度です。

米国出願における権利取得実務の一例
米国出願における権利取得実務の一例

このような、方法は、日本の実務家から見ると姑息な方法にも感じられるかも知れません。しかし、米国の特許制度は、発明者の適切な保護に重きをおいているので、問題ありません。むしろ、競業者の監視実務が甘いとの評価がなされます。

このような観点から、米国における好ましい権利取得と他社の監視実務を検討しています。権利取得の観点からは、無闇に広い権利を取得するよりも、先ず、確実に取得できる権利を取得して、継続出願を泳がせておく方が得策です。
一方、他社の特許権の監視実務の観点からは、特許権が発生しても継続出願の動向を注意して監視する必要があります。この監視においては、補正によって権利取得可能な範囲を推定することも必要となります。
このように、ダブルパテントの観点だけでも、実務上の大きな差が発生することになります。このようなプラクティスは、一般的に知られたものですが、米国特有の事情に基づいた様々な実務が行われています。

藤岡隆浩

弁理士・知的財産翻訳検定試験委員
日本弁理士会 欧州部長および国際政策研究部長を歴任